はじめに

電力は人の生活に欠かせないインフラです。

すべての人、全ての会社が電力がなければ正常な日常を送ることができません。非常に重要なインフラであると言えるでしょう。

東日本大震災以降は就職人気も若干落ち着いていますが、「人の暮らしの根本を支えたい」という学生の方々には依然として人気のある業界です。

法改正や社会情勢の動きに大きく影響される業界でもあります。

この記事では電力業界の社会的役割や今後の動向、向いている学生の特徴等を解説していきます。

是非最後までご覧ください。

業界研究をする前に

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電力業界の業界研究に入る前に業界研究をやる目的を明確にしておきましょう。

業界研究は業界の現状や将来性に関する情報を集めるだけでは片手落ちとなってしまいます。

業界の情報と自分の特性や性格を擦り合せることで、自分にあった業界なのかどうかを考えることが大切です。

そして入社後「こんなはずじゃなかった」とミスマッチにならないようにすることが業界研究の正しい目的です。

電力業界について理解を深めながら「本当に自分に合う業界なのか、仕事があるのか」も意識して読み進めてみてください。

ちなみに業界研究を始めたばかりの人ややり方がよく分からないという人は、こちらの記事も合わせて読んでみてくださいね。

業界研究,やり方

業界研究の目的を正しく理解したうえで、電力業界は自分が活躍できそうなフィールドなのか見極められるようにしましょう。

電力業界とは

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まず電力業界の全体像を把握しましょう。

電力業界は主に3つの機能に分けられます。

  1. 発電
  2. 送配電
  3. 小売り

の3つです。

発電は電気を作る事業者を表します。燃料を調達し自社で発電設備を持つ会社ですね。

配送電は電気を消費者が必要な形に変電したり電線で届ける機能を担います。発送電分離が義務付けられ発電事業者と送電事業者は別会社になっています。

最後に小売りは消費者に電力を販売する事業者ですね。2016年の小売り自由化から様々な通信会社やガス会社等様々な事業者が電力の小売り事業を開始しています。

電力業界の概要

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次に電力業界の主な事業者を見ていきましょう。

特に発電は大きな設備投資を必要とすることからご存じの大手企業ばかりです。

発電

電気を発電する設備を持つ事業者です。

ご存じの東京電力関西電力中部電力等がこの発電事業者となります。

発電所を作るには数千億円という莫大な投資が必要となるため事業参入できる会社は限られます。

近年は再生可能エネルギー等の分野で新規事業者も増加しています。

送配電

電気を届けるための配電設備を構築、維持する事業者です。

皆さんの生活を守るために欠かせないインフラ設備であることから事業を行うには国の許可が必要です。

元々発電と送電は同じ事業者が行っていたため現在でも実質は発電会社から分離した兄弟会社が運営をしております。

東京電力や関西電力のグループ企業がこの送配電に関わっています。

電力小売り

電力小売りは自由化以降多くの事業者が参入しました。

元々東京電力や関西電力等の電気事業者ばかりでしたが最近はガス会社通信会社も電力の販売を行い始めています。

それに伴って各社いかに差別化をするかに尽力をしており変化の激しい業界です。

電力業界の基礎知識

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電力業界の全体像について見てきました。ここで電力業界を業界研究する上で外せない3つのトピックスを抑えておきましょう。

1.日本のエネルギー自給率

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出所:資源エネルギー庁資料「日本のエネルギー2020」を基にシューブン編集部作成

日本のエネルギー自給率は11.8%と先進国では非常に低い水準にいます。

日本の発電は85%が化石燃料によるものです。石油、液化天然ガス、石炭いずれも海外輸入がほとんどです。

海外からの化石燃料の供給が不安定となった場合に備えエネルギー自給率を上げていくための取り組みが必要とされています。

例えば太陽光発電は2012年から2019年まで、毎年20%近い発電量の増加を達成しています。

2.法規制の緩和が続く

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電力は人の生活の根幹ですので安定的に電力を供給するために法規制が厳しくかかっていました

法に守られて電力会社は高収益な体質を維持してきましたが、昨今は発電事業者の自由参入が認められ小売りも自由化されています。

金融のオリックスや通信のソフトバンクも発電事業者となっています。

特に代替可能エネルギーを増加させようとすると既存事業よりも収益性が悪くなりがちなので従来の発電事業者は手を出しづらくなります。

新規参入者のほうが今までにない発想を持って代替可能エネルギーをビジネス化させることを考えやすいため法規制を緩和し新規参入を促してきました。

今後も電力の安定供給を前提とした法規制の変化が起きるものと想定されています。

3.高い日本の電力技術

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日本の発電技術及び送電の技術は非常に高く評価されています。災害からの復旧も非常に速いですよね。

私たちの安定的な暮らしはこうした電力会社の高い技術力に支えられています。

この高い技術を東南アジアやアフリカ等の発展途上国に輸出したりもします。

ODAによる途上国支援とともに電力発電や供給網の技術を海外で展開することで現地の方々の生活をより豊かにします。

電力業界の売上高ランキング

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出所:業界動向サーチを基にシューブン編集部作成

電力業界の売上は地域の経済規模と比例します。東京首都圏を管轄する東京電力が最も大きい事業者でありそれに次ぐのが関西電力となります。

法規制の影響から基本的に各地域ごとに大きな事業者はそれぞれ1社ずつとなっています。

過度な市場競争で収益性が低下するとインフラを維持するのに必要な利益を確保できない可能性があったため競争を避けてきたことが背景です。

今後は市場参入者が増加して従来以上の競争が起きると想定されます。

電力業界の現状と今後の動向

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ここまで電力業界の全体像を見てきました。

ここからは電力業界で今起きていることとこれから起きるであろうことを見ていきましょう。

特に電力業界は世界的な方針を大きく受けますので業界だけでなく世の中全体の大きな流れをつかむことが大切です。

視野を広げて世界的な政治の話等も確認するようにしてくださいね。

現状

まずは電力業界の現状を見ていきましょう。日本の電力事情は課題が山積しています。

1.電力使用量の推移

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出所:業界動向サーチを基にシューブン編集部作成

電力会社の収入は「電力の使用量×単価」になるわけですが使用量はここ数年横ばいから右肩下がりの傾向です。

電力各社の電気発電量が限界に近く夏や冬といった電力消費のピークになると消費者に対して節電の要請を行っています。

電力事業自体はなかなか伸ばしづらい状態であるということが言えるでしょう。

2.脱炭素

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世界各国ともにCO2排出量削減に取り組んでいます。

特に石炭発電や石油発電の発電所に対する風当たりが強く世界各国で化石燃料を使った発電所の閉鎖、新規建設の中止が発表されています。

日本は脱炭素の動きが遅れていると世界から指摘されることも多いためより踏み込んだ政策が必要となるでしょう。

脱炭素という世界の流れは日本の電力会社も無視できない状態となっています。

3.原子力発電をどうするか

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東日本大震災以後、原子力発電の安全性について議論が重ねられてきました。

安全性が確認できたいくつかの原発は稼働を再開していますが反対論も根強くあります。

原子力発電が使えないことで電力の供給量も下がり消費者に節電を要請するなど人々の生活を支えるのに苦労しています。

今後原子力発電所をどうしていくかは電力業界にとって重要なトピックとなっています。

電力業界というより国をあげての課題とも言えるでしょう。それほど電力業界の社会へのインパクトは大きいものです。

今後の動向

ここまで電力業界の現状を見てきました。電力業界はインフラであるがゆえに大きな変化というとのは起きづらくゆっくり進んでいきます。

いきなり人の生活が大きく変化することは難しいためです。基本的には現状の延長線上で今後の展開も考えれば間違いありません。

1.電力構成の見直し

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脱炭素化や原子力依存の見直しを前提に今後の発電がどうあるべきか検討が進んでいます。

太陽光発電や風力発電等の代替可能エネルギーをベースにした発電量を増やしていく方向性は間違いありません。

どのペースでどのように進めるかが今後より具体的に議論されていくでしょう。

国のエネルギー基本政策を把握しておくと電力業界の今後の方向性が理解できます。

2.異業種からの参入増加

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電力小売りの自由化に伴い多くの事業者が電力小売りに参入してきました。

他のサービスと一緒に導入するとポイントがつきやすくなる等、各事業者共にマーケティング活動を強化しています。

楽天でんきを契約すると楽天ポイントが貯まりやすくなるのがわかりやすい例ですね。

従来の電力会社だけでなく資本力を持つ異業種の事業者が電力の発電や小売り事業により多く参入することが予想されます。

今まで以上に顧客を囲い込むためのマーケティング力が事業者に必要とされるようになりました。

3.サービスの差別化

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環境への意識の高い欧州などでは消費者が自分で「再生可能エネルギーのみを買う」をという選択ができるようになっています。

日本でも今後再生可能エネルギーのみを利用する等が消費者の選択でなされるようになるでしょう。

それに応じて電力会社各社のサービスも独自性が求められることが予想されます。

仕事内容

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ここからはより具体的に電力業界で働く人たちがどのような仕事をどのようなモチベーションで行っているかを見ていきましょう。

文系理系問わず非常に多くの働き方がありますので代表的なものを見ていきます。

マーケティング

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電力の小売りは一つ一つの世帯に営業をしていくのは非効率なのでテレビやウェブを使ったプロモーションが一般的です。

いかに消費者に自分たちのサービスを選んでもらうかを考え行動するマーケティング活動がとても大切になります。

どんな企業も売上が上がらなければ会社は継続できません。

会社の売上を担うマーケティングは会社全体をリードしていくリーダーシップの求められる職種と言えます。

法人営業

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電力の消費は一般家庭だけでなく企業の使用も非常に大きい割合を占めます。

工場での利用や商業施設、オフィス等常に電気もエアコンも稼働してますね。

法人向けには1企業当たり数億の売上になることもあるので営業担当がつきます。

顧客企業の要望と自社の利益を両立させるタフな交渉等が必要となります。

調達

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電力の生産に必要な燃料の調達をします。

総合商社等が海外から液化天然ガスや石炭を買い付けてきます。

それを必要量商社から買い付けをし発電所まで配送してもらう仕事です。

燃料価格が上がったからといって電力料金を上げることは難しいですよね。

世界的な寒波や熱波があると石炭やガスの価格が大きく動いてしまいます。

安定した価格で安定した量を調達できるかが難しいところです。

世界経済の流れを読み金融の知識も駆使しながら安定調達を支える専門的な仕事になります。

メンテナンス

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電力を届けるために安定的な電力設備のインフラを維持するための仕事になります。

何も問題が起きないようにすることが仕事ですので刺激がない仕事と思われがちですがルーティーンを正確にこなすことが求められる仕事です。

一つ一つの仕事を正確にこなすことに喜びを感じるような人は向いている仕事と言えるでしょう。

給電指令

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世の中の実際の電力消費の見込み等を踏まえながら生産量を調整する仕事です。

電気の消費量が少ないのでたくさん生産しても仕方がないので、供給量と需要量を正確に見積もる必要があります。

どんなことがあると電力の消費が増えるのか減るのか過去のデータと今起きていることを踏まえつつ判断をするため分析力が必要となります。

配電

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配電は配電設備のインフラ維持管理が仕事です。電線等の異常検知や変電所の監視保守が必要になります。

安定して各消費者に電力を届けられるようミスのない仕事が求められます。

基本的にはルーティーンの仕事が多いですが異常発生時には柔軟な対応も求められる仕事となります。

電力業界に向いている学生

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具体的にどのような仕事があるかを見てきましたので、ここからは電力業界で活躍できる人の特徴を見ていきましょう。

ルールに従って正確に仕事を行う

電力,業界

電力業界はインフラ事業であるため電気が届いて当たり前です。

当たり前のことを当たり前にできることというのは難しいものです。

このルーティーンをルール通りにミスなく続ける力が求められます。

問題から目をそらさない

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電力業界は少しのミスでも大きな問題に発展します。

みんなの生活の根幹を支えているからこそどんな小さな問題も見過ごさない責任感が求められます。

同じような仕事の中にも常に緊張感をもって業務にあたる謙虚さと勇気のいる仕事と言えるでしょう。

仲間意識が強い

電力,業界

インフラを維持するのは本当に大変な仕事です。莫大な施設を維持管理するのは一人の力ではできません。

調達も膨大な量の調達が必要となりますしマーケティングも大規模です。

基本的にすべての仕事はチームで行われるものとなりますのでチームワークがとても重要な仕事となります。

まとめ

電力,業界

電力業界の業界研究を進めてまいりました。

人の生活の根幹を支える大切な仕事ばかりですので責任感の必要な仕事ばかりです。

また昨今の法規制の変化や社会情勢を背景に地球市民の一員としての意識を一層強く求められています。

謙虚で真面目なタイプが電力業界で活躍していく人と言えるでしょう。

ちなみに本サイトでは、不動産業界以外にも様々な業界について解説しています。

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この記事を書いた人mike