はじめに
ホテル業界は華やかでドラマや映画の舞台となっていることからも分かるとおり、就活生からすると大変人気の高い憧れの業界です。
しかし、ホテル業界にも様々な業態や企業が存在するため「まず、どんな情報から集めればよいのだろう?」と業界研究の進め方に不安を感じている人も多いのではないでしょうか?
また、昨今の新型コロナウィルスの影響について気になっている人も少なくないと思います。
この記事では、ホテル業界の概要や状況、具体的な仕事内容や向いている学生まで分かりやすく解説していきます。
「新型コロナウイルスの影響や今後の動向が知りたい」とか「ホテル業界に興味があって具体的にどんな仕事があるのか?」という人はぜひ参考にしてください。
業界研究をする前に
ホテル業界について理解を深める前に、まずは業界研究の目的をしっかり確認することから始めましょう。
業界研究の目的は業界の情報を集めることだけではありません。
業界の情報と自己分析の結果と照らし合わせることで、自分に合った業界か見極め、入社後のミスマッチを防ぐことが業界研究の正しい目的です。
この後の記事を読むときは、ホテル業界について理解を深めつつ「本当に自分に合う業界・仕事内容なのか」を意識しながら読み進めてみてください。
ちなみに業界研究を始めたばかりの人ややり方がよく分からないという人は、こちらの記事も合わせて読んでみてくださいね。
業界研究の目的・やり方を正しく理解したうえで、ホテル業界への理解を深めていきましょう。
ホテル業界とは
ホテル業界は宿泊だけではく、飲食から物販・コンベンション・レジャーなどの機能も持っていて、仕入れ先には、食材・商品・備品・清掃・リネンサプライなどがあります。
また、宿泊予約についてもネットエージェント・旅行代理店などや、不動産オーナー・リース会社などとも深く関係しています。
多くの事業者の中で一大商流となっているのがホテル業界です。
ホテル業界には知名度の高い企業も多く、就活生から非常に人気のある業界です。
しかし、ホテル業界と一言でいっても、その事業内容によって多くのジャンルに分類されます。
まずは、ホテル業界の概要や売上高ランキング、基礎知識を解説していきます。ホテル業界を志望する人はぜひ最後まで目を通してみてください。
ホテル業界の概要
ホテル業界というと、「星野リゾート」や「リッツカールトン」といった大手ホテルグループを思い浮かべる人が多いのではないでしょうか?
「星野リゾート」や「リッツカールトン」はそれぞれ、リゾートホテル、外資系ホテルに分類されます。
このように、ホテル業界には上図のような6つの業態があり、それぞれ運営方法や顧客対象なども変わってきます。
ここでは、それぞれの特徴を理解しホテル業界の全体像を把握していきましょう。
1. リゾートホテル
「リゾートホテル」は、海辺・スキー場・高原などのリゾート地にあるホテルで、利用客は多くは観光目的の利用が多いようです。
代表的な企業:星野リゾート/鬼怒川金谷ホテル/ホテル日航アリビラ/日本平ホテル/ザ・リッツ・カールトン沖縄/ザ・ウィンザーホテル洞爺 リゾート&スパ 他
2.ビジネスホテル
「ビジネスホテル」は、文字通りビジネスマンが多く利用するホテルで都心部や地方都市の駅前にあるホテルです。
代表的な企業:三井ガーデンホテル/チサンホテル/京急EXイン/アパホテル/ヴィラフォンテーヌ/東横イン/品川プリンスホテル 他
3.シティホテル
「シティホテル」は都市の中心にあるホテルで、宿泊だけでなくレストランやカフェ、宴会場、結婚式場、スポーツクラブなど多種多様な施設を有しています。
客層は幅広く、家族連れからおひとり様、最近では外国人が利用することも多いです。
代表的な企業:パレスホテル東京/シャングリ・ラ ホテル東京/ホテルオークラ/ウェスティン/ホテル インターコンチネンタル 東京ベイ/コンラッド東京/ヒルトン東京 他
4.テーマパーク系ホテル
ディズニーリゾートなど統一されたテーマで運営されるレジャー施設のテーマパーク内や、隣接して建てられたホテルです。
代表的な企業:東京ディズニーシー・ホテルミラコスタ/シェラトン・グランデ・トーキョーベイ・ホテル/ホテルアムステルダム 他
5.日系ホテル
「日系ホテル」といえば、帝国ホテル、ホテルオークラ、ホテルニューオータニがその御三家になります。日系ホテルは所有も運用も直営で行っているのが特徴です。
外部に委託することが少ないため、サービス等も自社で行うことでよりきめ細かいサービスを提供できます。
代表的な企業:帝国ホテル/パレスホテル/ホテルオークラ/ホテルニューオータニ 他
6.外資系ホテル
「外資系ホテル」は誰もが知っているブランド力のあるホテルです。ザ・リッツカールトン東京など、誰もが知っているホテルになります。
日系ホテルとの違いは、所有者と経営者が別々なことが多く、例えば所有者は三井不動産であっても、運営は外資系のリッツカールトンカンパニーL.L.Cのようになります。
代表的な企業:マンダリン・オリエンタル東京/ザ・ペニンシュラ東京/リッツカールトン東京 他
ホテル業界売上高ランキング
ホテル業界の売上高ランキングは上図のようになっています。
鉄道系、リゾート系、ホテル専業、不動産系の企業に分類され、大資本の企業が軒並みランク上位に位置しています。
ランキング1位の西武HDは「プリンスホテル」を運営しており、シティホテル、リゾートホテルを展開。特に首都圏とリゾート地に、国内外で80ほどのホテルを持っています。
また、2位のリゾートトラストは超富裕層・富裕層向けの会員制ホテルを展開し、コロナ禍でもその影響をあまり受けず手堅い経営をしているのが特徴です。
ホテル業界の基礎知識
1.直接販売と委託販売
ホテルの客室は、上図のように旅行会社・旅行代理店・旅行予約サイトなどに委託して販売する方法と、自社サイトから直接販売する2つの方法があります。
インターネットからの予約が主流になっているため、ネットからの集客は生命線になっています。
旅行予約サイトなどでは、宿泊だけでなく、鉄道の予約や飛行機の旅客券も含めて「セット予約」できることも多くなってきており、需要も増えてきています。
2.ホテル施設数の増加
厚生労働省の「衛生行政報告例」によると、2018年にはホテル施設数は10,402軒(90.75万室)。
2011年より施設数で539、客室数で約9.35万室増え、ホテル数は大幅ではないですが、増加の傾向になっています。
3.政府の訪日外国人旅行者に対する目標
政府の訪日外国人旅行者に対する目標は、2020年で4,000万人、2030年には6,000万人まで伸ばしたいという目標を立てています。
これは、ホテル業界とって大いに追い風になるでしょう。
4.外国人向けサービスの拡充
訪日外国人の増加に伴い、英語や中国語によるホームページ・パンフレット、外国語を話せるスタッフの拡充が必須となってきています。
また、イスラム圏からの旅行者のために「ハラル認証」と言われるイスラム教で摂取が禁じられている食材を使わないといった認証を取得するホテルも増えてきています。
5.民泊へのルール作りが進む
最近話題になっている「民泊」とはホテルや旅館ではなく一般の家に宿泊することです。
日本でも東京オリンピックを期に民泊に対する法整備も進み、今後ホテル業界とのシェアの取り合いが懸念されそうです。
ホテル業界の現状と今後の動向
入社後長く働き続けるには、業界の置かれている状況や将来の動きを知ることは非常に重要です。
ここからは、ホテル業界の動向やこれからどんな新事業が展開していくのかなど、ホテル業界の未来について解説していきます。
現状
上図は国内ホテル業界の市場規模の推移をグラフで表したものです。ホテル業界の規模の推移を見るとその市場の現状や動向を把握することができます。
ホテルの国内市場規模は、2008年9月のリーマン・ショックで大きく落ち込み、2011年3月の東日本大震災でさらに追い打ちをかけられました。
その後、経済環境の好転にともない国内観光需要が増え、外国人の国内誘致活動などにより状況は一転、2015年からは微増、増加の傾向が続き、2018年度のホテル国内市場規模は前年比5.6%増の2兆291億円となりました。
しかし、2020年の新型コロナウィルス感染拡大によるホテル離れは深刻で、今後業界的に大きな変革が求められている状況になっています。
今後の動向
これからのホテル業界の動向を理解する上で、必ず抑えておきたい動向や将来的取り組み4点について説明いたします。
1.コロナ禍のホテル業界の動向
2020年の新型コロナウィルス感染拡大の影響により、宿泊者数は約50%減となりました。
シティホテルの稼働率は34.7%、ビジネスホテル稼働率は43.5%、リゾートホテル稼働率は30.9%と前年度に比べていずれも半分ぐらいの水準になってしまいました。
特にシティホテルの落ち込みが大きく、訪日外国人客の激減によりホテル業界は大きな打撃を受けました。
2.資金調達は必須に
プリンスホテルを運営する西武HDは、2020年に2,400億円の資金調達を実施しました。
これによって、手元資金を増やし、不測の事態による資金ショートに対応することができるようになりました。
新型コロナによる対応として資金調達はどの企業でも今後必須になってくるでしょう。
3.ポイント提携
東急ホテルズを展開する東急は、2020年11月から「楽天ポイントカード」と提携を開始しました。
これにより、東急が運営するすべてのホテルで「楽天ポイント」を貯めたり使う事ができるようになりました。
ポイントカードとの連携は今後ホテル業界において加速していくでしょう。
4.ワーケーション
ワーケーションとはワーク(仕事)とバケーション(休暇)を掛け合わせたもので、観光地や休暇先でリモートワークをする過ごし方のことです。
プリンスホテルを運営する西武HDは、軽井沢など3カ所のリゾート施設でワーケーションプランを新設。
Wi-Fiが整備された客室でのリモートワークの息抜きに、温泉や大自然での散策を提案しました。
こういったワーケーションへの取り組みも今後ますます増えていくと思われます。
ホテル業界の仕事内容
ホテル業界の理解が深まったところで、具体的な仕事内容を見ていきましょう。事前に業務内容を知っておく事は業界研究には非常に大切です。
ここでは、ホテル業界の主な職種を5つご紹介します。自分の興味や適性と照らし合わせながら、ホテル業界への理解をさらに深めましょう。
1. 宿泊部門
宿泊部門では
- フロント
- ベルアテンダント
- ドアアテンダント
- コンシェルジュ
- ハウスキーピング
などの職種があります。
ホテルの根幹と言える客室販売と宿泊客の待遇を担当する重要な部門です。
2. 宴会部門
宴会部門は結婚式などのサービスや予約手配を担当します。
- ハウスキーピング
- 宴会サービス
- クローク
などの職種があります。
3. 料飲部門
料飲部門は、ホテル内のレストランでの接客サービスや客室内で食事が楽しめるルームサービスを担当します。
職種としては
- レセプショニスト
- ウェイター
- ウェイトレス
- ルームサービス
- バーテンダー
などがあります。
4. 管理・営業部門
ホテルを裏側からサポートする部門です。
- 人事
- 総務
- 経理
- 広報
- 施設管理
- セールス
- 企画
まで幅広い職種があります。
5. 調理部門
ホテル内のレストランで料理を提供する部門です。シティホテルなどでは、レストランも多数あり、調理スタッフが100名を超える場合もあります。
職種としては、
- シェフ
- ブッチャー
- ベーカリー
- ペストリー
- ガテマンジャー
などがあります。
ホテル業界に向いている学生
ホテル業界について紹介してきましたが「自分に向いているのか分からない!」「どんな人が向いているのか?」など疑問に思う人もいると思います。
そこで、ホテル業界に向いている学生の特徴を4つ紹介しますので参考にしてみてください。
- 対人スキルが高い
- 語学力が高い
- 企画力がある
- 視野が広い
①対人スキルが高い
サービス業という性質上、対人スキルは必須です。これは利用者さまの意図を予測して対応する能力だけでなく、職場内でのコニュニケーションを円滑に保つためにも重要なものです。
②語学力がある
ホテル業界では訪日外国人観光客が年々増えてきています。英語圏のみならず中国や韓国や東南アジアからも多くの方がホテルを利用されます。
そんな、外国人観光客に寄り添うためにも日本語プラス英語(外国語)ができる人材は重宝されるでしょう。
③企画力がある
ホテル業界では、単に宿泊数を増やすというだけでなくリゾート観光とセットにしたプランやワ―ケーションプランなど、社会状況によって新しいプランを企画することが重要になってきます。
そのためにも、柔軟な企画力・発想力を持っている人はこの業界で活躍できるでしょう。
④視野が広い
ホテル業界は経済動向やムードに非常に左右される業界です。
国内の政治経済、海外事情、イベント、スポーツなど常にアンテナを張り巡らせて、広い視野で物事を見る柔軟性が求めらるでしょう。
まとめ
ここまでホテル業界についてご紹介してきました。
ホテル業界は新型コロナ感染拡大によって多大なる打撃を受けました。
しかし、資金調達やワ―ケーションなどの新プランの登場、ポイントカード連携などにより長いトンネルを抜け出そうとしています。
このように、ウィズコロナ時代への対応が今後のホテル業界の成長のカギとなります。この状況を乗り切ると再び需要が拡大することが予測されます。
今回紹介した5つの仕事内容に興味を持った人や、対人スキル・語学力に自信のある方はホテル業界を視野に入れて就活してみてはいかがでしょうか?
ちなみに、自分にあった業界を選ぶためには、業界研究だけでなく自己分析も大切です。
自己分析のやり方については、以下の記事を参考にしてください。
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