はじめに
この記事ではリース業界に関する研究を行っていきます。
おそらく就職活動を始めるまで「リース」という言葉を聞いたことがなかったのではないでしょうか。
基本的には企業同士の取引をしている業界ですので、学生が触れる機会はありません。
リース業界は金融業界に属するのですが何をやっているかわかりづらいですよね。
一方で大手企業であればほとんどの企業が導入している普遍的なサービスであり難しくはありません。
リース業界の社会的役割や今後の動向、向いている学生の特徴等を解説していきます。金融や商社に興味のある方には魅力的な業界だと思います。
是非最後までご覧ください。
業界研究をする前に
リース業界について業界研究を進める前に業界研究の目的を明確にしましょう。
業界研究は業界の情報を集めることだけが目的ではありません。
分析した業界の情報と自己分析を照らし合わせることで、自分の性格や特徴にあった業界なのかどうかを考えられるようになります。
そして入社後のミスマッチを防ぐことが業界研究の正しい目的です。
この記事ではリース業界について理解を深めつつも「本当に自分に合う業界・仕事なのか」「他の業界と何が違うのか」をイメージしながら読んでみてください。
ちなみに業界研究を始めたばかりの人ややり方がよく分からないという人は、こちらの記事も合わせて読んでみてくださいね。
業界研究の目的を正しく理解したうえで、リース業界は自分が活躍できそうなフィールドなのか見極められるようにしましょう。
リース業界とは
リース業界は金融業界の一部に位置付けられます。例えば銀行がお金を貸すのに対してリースは「モノ」を貸します。
企業が1台20万円のパソコンを1000台買うとします。合計で2億円かかります。手元にお金がありませんが来月から毎月1000万円ずつ売上が入ってくるとしましょう。
この時に銀行から2億円を借りてパソコンを購入することもできますし、リース会社からパソコンを借りることもできます。
企業がやりたいけどお金がなくてできないことを実現させるという意味で「モノを貸す」リースも金融となるのです。
リース業界の概要
リース業界はいくつかの系統に集約されてきました。
リース会社は自分でモノを購入してそれを顧客に貸すのでリース会社自身が最初にモノを購入するため初期投資が大きくなります。
資金力の大きい企業グループの系列であることが多いです。
メガバンク系
メガバンクの資金力を生かしどのリース会社も相応に大きな規模です。資金力を生かした航空機リース等の大型案件に携わります。
三井住友銀行と住友商事を親会社に持つ三井住友ファイナンス&リースや三菱UFJ銀行系と日立キャピタルが合併した三菱UFJリースが大手です。
独立系
日本最大のリース会社がオリックスです。
特に自動車リースに強く皆さんもオリックスでレンタカー借りたことあるのではないでしょうか。
資金力を必要とするリース業界で独立系で大きくなるのは困難です。オリックスが唯一無二の存在です。
メーカー系
パソコンやオフィス関連機器のメーカーが自社グループの製品を販売する時に顧客にリースを活用してもらうべくリース会社を保有しています。
日立系の日立キャピタルが三菱UFJキャピタルに吸収される等メーカー系リースは減少傾向です。現在でもリコーリースやNECリース等があります。
インフラ系
NTTなどのネットワーク関連の自社サービスを顧客に販売する時にリースを活用するためグループ企業にリース会社を持っています。
JA三井リースは農林中金と三井物産が筆頭株主で、インフラ系と商社系の両方の性格を持ちます。
商社系
「モノ」を大量に仕入れて販売するトレーディングが商社の本業ですから「モノ」を扱うのは商社の得意分野ですね。
伊藤忠系の東京センチュリー、住友商事系の三井住友ファイナンス&リースがオリックスに次ぐ業界大手です。
リース業界の基礎知識
リース業界がなぜ金融なのかやリース業界の大手企業を見てきました。
ここからはリースが社会的にどのような意義を持つのかを説明します。
1.なぜ企業はリースを活用するのか
リースを調べていくと「会計基準を考えるとメリットがある」等少し難しい話が並びますが細かいことを気にせず概念だけ理解しましょう。
リースが活用されるのは主に3つのメリットがあると考えられます。
1つ目は資産の処分の手間がないことです。
例えばパソコンであれば企業は5年くらいで買い換えますよね。自社で1000台のパソコンを購入したとすると入れ替える時にこの1000台処分しないといけないわけです。
普段パソコンを処分なんてしませんから手間もお金もかかります。リース会社は自分でパソコンを保有し使い終わったものを売却するプロです。
使い終わったらリース会社が引き取って新しいパソコンに替えてくれるのであればとても楽ですね。
2つ目は初期費用が少なくて済むことです。パソコン1台20万円を1000台で2億円かかります。リースなら毎月定額払いにできます。
今お金がなくとも将来コツコツ稼いでいくお金で利用料を払えばいいので資金負担が軽くて済みます。
3つ目はお財布事情の問題です。通常企業は「業績をこれくらいにしたい」「投資にはこれくらいお金を使う」という2つのお財布を別々に持っています。
例えば「投資にたくさんお金を使ってしまったけど業績はいい」という会社があります。
業績は良くてパソコン買いたいしお金もあるけど投資の財布はもう余裕がない、という時にリースを使えば投資のお財布を使わずにパソコンを入手することができますね。
このように3つの理由から企業はリースを活用しています。
2.リースとレンタルの違いは
「モノを貸す」という意味では両方とも同じですが一般的にリースというと長期の契約を指します。
パソコンのリースは3年や5年、車のリースも5年や7年ですので長期ですよね。基本的に中途解約ができないというのも特徴的なところです。
レンタルは1日から1週間くらいでしょうか。全然違いますね。
3.ファイナンスリースとオペレーティングリースの違い
リース業界の業界分析でつまづきがちなのがこのファイナンスリースとオペレーティングリースの違いです。
会計基準の話をされてもよくわからないので、イメージだけ持ちましょう。
基本的にファイナンスリースは「お金を借りて買うのと一緒だけどお財布の問題で投資のお金を使えないからリースにした」くらいのイメージです。
その会社でしか使えないような特注のものだったりリース契約が終了したのちはその会社が買い取ることができるものです。
お金がないからリースを使うという「お金の事情」の場合はファイナンスリースと覚えましょう。
オペレーティングリースは「手間を考えると購入するより借りた方がいい」というものをリースした時のものです。
パソコンのように技術革新のサイクルが短くすぐ買い換えるものはリースの方が望ましいですよね。
自社で保有してしまうと処分が大変です。自動車もたくさん保有すると売却したり廃車したり大変です。
全国に支社がある会社だと全国からパソコンや車を回収して売らないといけないですが、リース契約ならリース会社に1本連絡して引き取ってくれます。
手間が面倒だからリースを使う場合、これがオペレーティングリースです。
リース業界の売上高ランキング
業界トップはオリックスです。オリックスはもちろんリースも強いですし多角化経営を進めております。
業界2位が三菱UFJリースと三井住友ファイナンス&リースです。三菱UFJは日立キャピタルを吸収しておりこのランキングで見るより一気に拡大しています。
オリックスを除けば銀行系と商社系が上位に来ます。
リース業界の現状と今後の動向
ここからはリース業界の現状と今後の動向について説明をします。
リース業界で何が起きているかや今後起こりうる業界の変化をしっかり理解してください。
現状
リース業界は伸び悩んでいるとも底堅いとも言える状況が続いています。以下に把握しておきたい市場の現状を3つ見ていきます。
1.市場は底堅く横ばいを維持
上の表の通りリースの契約残高はここ数年伸びていません。
企業の投資が大きく伸びない中でリースも伸び悩んでいます。
リースに係る会計ルールがどうあるべきかの議論も続いており企業としてはリースを活用するのに二の足を踏むことが多いのでしょう。
一方でこれだけ逆風が吹いている中でも減少しないということはリースの需要の底堅さを証明しているとも言えます。
2.リースはどれくらい普及しているのか
法人リース事業協会の調査によると実に88%の大手企業がリースをすでに活用しています。
過去には90%を超えていたこともありみんな使っているものと考えられるでしょう。
学生の目に触れることはないのですが、こんなにも多くの会社に利用されているサービスになります。
3.大手に吸収合併されるリース会社
三井住友銀行系のリース事業と住友商事系のリース事業が統合しました。
また三菱UFJ銀行系のリースと日立系のリースも統合しています。
市場が拡大しない中で収益性を高めるにはシェアを高めるのが効果的ですのでこうした吸収合併が増えます。
今後の動向
次に現在のリース業界の今後の動向を見ていきましょう。
国内市場が拡大しづらい中で各社ともに事業戦略の工夫を強いられています。
1.海外に活路を求める
まずは海外展開です。設備投資を活発にしたり経済成長が著しい地域ではリースも伸びやすくなります。
発展途上国への進出を各社ともに増加させています。
また航空機リースのような特定の収益性の高い事業への投資も進めてきました。
今後も「どこで戦うか」をしっかりと考えていく必要があります。
2.DX化は商機
現在各社がこぞってDX(Digital Transformation)化を進めています。デジタル化を進めることで効率益な経営を目指しています。
このDXの取り組みが加速することはリース会社にとっても商機になります。
RPA(Rbotics Process Automation)のように人のやる作業をパソコンに自動でさせる仕組みが普及すればパソコン端末の台数も増えます。
また商用3Dプリンターのようなものがもう少し普及していくとそのプリンターの導入等がリースの対象となってきます。
時代の変化に合わせてリースのビジネスも少しずつ変わっていきます。
3.SDGsとの相性がいい
SDGsという言葉をご存じでしょうか。Sustainable Development Goalsの頭文字で持続可能な開発目標の意味です。
豊かな地球資源を守り次世代につなげていくための取り組みのことを指します。
リースはパソコン等を購入して貸し出したのちに貸し出し期間が終わると中古市場で売却するのが一般的です。
企業が購入して廃棄してしまうよりもより長くパソコンを使用できますしリサイクルすることも可能となります。
限りある資源をいかに使うかは「モノ」を多く扱うリース会社だからこそ先進的な取り組みができるのです。
仕事内容
ここまではリース会社の概要や業界で話題になっていることを中心に説明してきました。
業界研究としては働き方やモチベーションも大切ですのでここからはより具体的な働き方をお伝えします。
法人営業
リース会社で最も多くの人が携わるのが法人営業です。
企業向けにリースを活用してもらえるよう営業をします。
更新投資のタイミングを見逃さないようにコミュニケーションをとったり新規事業案件を捕捉する等、クライアントとの緊密な連携が求められます。
審査業務
次にリースの審査です。
比較的長期にわたりモノを貸し出しますので5年・7年後でもリース料を継続して払える会社かどうかを見極めないといけません。
取引先企業の将来性や安定性を見極めるものリース会社の大切な仕事の一つです。
企画業務
最後は企画業務です。今後の動向で見たとおり国内リース市場が頭打ちになる中で他の収益機会を積極的に狙っています。
海外展開を検討したり新規ビジネスを検討する部署でいかに次の収益の柱を作るかの企画業務があります。
リース業界に向いている学生
具体的な仕事を3つご覧いただきました。
この仕事を進めるにあたってリース業界で求められる資質を3つご紹介します。
- チャレンジ精神
- 他人の視点で考える
- 広い分野の知識を持つ
それぞれ解説していきます。
チャレンジ精神
リース会社は法人営業が中心の会社です。
年間の予算、月別の目標が定められますので目標を達成できるようチャレンジをしないといけません。
新規事業や海外展開においても新しい市場を自ら切り開いていくチャレンジ精神が求められます。
与えられた目標を達成することに強いこだわりを持つ人には向いていると思われます。
他人の視点で考える
法人営業をするにあたり大切になるのが他人の視点で考えるということです。
必ず法人顧客ありきのビジネスですから顧客がどんな課題を持っているのか、何をして欲しいと考えているのかに思いを巡らせることが大切です。
顧客目線になった時にリースをいかに活用するかを考え提案できると顧客からも信頼されるでしょう。
人への共感力がある人は活躍できる人だと思います。
広い分野の知識を持つ
海外展開や新規事業に力を入れています。
新しいビジネスに取り組むときは今までのビジネスの延長で考えてもいいアイデアが浮かびません。
幅広く世の中の流れを読みリース事業に生かせるものはないか、他の業界の事例を活用できるものはないか等、知識や情報を活用することが重要です。
世の中の変化や新しいものを敏感に感じ取れる人は新しいビジネスを開拓するのに向いている人でしょう。
まとめ
リース業界の業界研究を行ってまいりましたがいかがでしたでしょうか。
市場は大きく拡大しないからこそ海外展開や新規ビジネスの創造に本気になっている業界です。
リース事業は底堅く需要があるので安定的な収益を生み出しながら次の成長の柱を作る面白いタイミングだと思います。
法人営業をやると社会人としての基礎もしっかりつきますし大手企業が多いので研修やOJTなどの制度もしっかりしています。
まずはビジネスパーソンとして一人前になり将来は海外で働くことや新しいビジネスを作りたい、と考えている学生の方には魅力的な業界ではないでしょうか。
ちなみに本サイトでは、リース業界以外にも様々な業界について解説しています。
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