はじめに
就職人気ランキング上位に多くランクインする業界の一つが損害保険業界です。
東京海上日動火災や三井住友海上火災等、聞いたことがあるのではないでしょうか。
一方で保険というものは海外旅行かレンタカーを借りる時くらいしか接点がないですよね。
なぜ損害保険業界がそんなに人気があるのかわからない、という方も多いと思います。
実は損害保険業界はより身近なものでほとんどの人がお世話になっているサービスです。
そんな損害保険業界の社会的役割や今後の動向、向いている学生の特徴等を解説していきます。
あまり損害保険業界を志望していなかった人ももちろん、業界研究を進めてきた方でも新しい発見のある内容となっています。是非最後までご覧ください。
業界研究をする前に
損害保険業界について業界研究を進める前に「そもそも業界研究をなぜやるのか」、目的を明確にすることから始めましょう。
業界研究では業界の情報を集めることだけでは不十分です。
業界の情報と自己分析の結果を照らし合わせることで、自分の特性にあった業界なのかどうかを考えられるようになります。
そして入社後のミスマッチを防ぐことが業界研究の正しい目的です。
この記事を読むときは、損害保険業界について理解を深めつつ「本当に自分に合う業界なのか、仕事があるのか」を意識しながら読み進めてみてください。
ちなみに業界研究を始めたばかりの人ややり方がよく分からないという人は、こちらの記事も合わせて読んでみてくださいね。
業界研究の目的を正しく理解したうえで、損害保険業界は自分が活躍できそうなフィールドなのか見極められるようにしましょう。
損害保険業界とは
損害保険業界は非常に幅広い業界です。いわゆる損害保険会社の役割は5つに大別されます。
- 保険商品を作ること
- 保険商品を企業向けに直接販売すること
- 保険商品を個人向けに直接もしくは間接的に販売すること
- 保険契約者に正しく保険金を支払うこと
- 保険料を受け取り資産運用をすること
まず①保険商品を作ることはわかりやすいですね。
個人の方であれば旅行保険や自動車保険がありますし、企業では例えば宇宙衛星の打ち上げが失敗した時の保険や石油を運ぶタンカーが座礁した時の保険等があります。
大手の損害保険会社は②企業向けには直接販売し、オーダーメードの保険商品を販売しています。
③個人向けの多くは代理店をを通じての販売となっています。
損害保険会社が直接販売するのはインターネットを使った自動車保険や火災保険くらいしかありません。
自動車保険はカーディーラーが自動車を販売するときに併せて販売してくれます。火災保険も住宅ローンを組むときに銀行が一緒に販売します。
この時のカーディーラーや銀行を代理店と呼んでいます。
そして保険契約者が困ったときに④契約に則り正しく保険金を提供します。
保険料を事前にもらい実際に困ったときに保険金を支払いますので、保険金を支払うまでの間は損害保険会社にお金が貯まります。
そのお金をいかに効率的に⑤資産運用するかも損害保険の会社の重要な役割です。
損害保険業界の概要
損害保険業界は非常に大きな業界です。年間の保険料収入は国内だけでも8兆円を超えます。
ここでは損害保険業界の全体像をつかんでいきましょう。
損害保険会社
損害保険会社は非常に古い業界ですので大手に集約されてきています。いわゆる「3メガ損保」体制となっています。
東京海上ホールディングス、MS&AD、SOMPOホールディングスが3つの大きな損害保険グループです。
損害保険代理店
損害保険の代理店には先ほど申し上げたカーディーラーや銀行があります。
それ以外にも損害保険代理店を専業でやっている会社もあり多くの代理店が存在します。損害保険会社は代理店の管理が大切です。
ダイレクト型
個人向けの保険販売は従来は代理店を通じて行うことがほとんどでした。
最近では自動車保険や住宅火災保険も個人の消費者が自分で調べ選択して契約することも増えてきています。
ソニー損保やアクサダイレクト等が有名です。
再保険会社
あまり知られていないのですが「保険会社のための保険会社」として再保険会社というものが存在します。
保険会社は災害等が起きたときに保険金の支払いが膨大になってしまうため、支払い負担を軽減するために保険をかけておくのです。
日本ではトーア再保険という会社が唯一の再保険会社です。イギリスだとAEON等があります。
損害保険業界の基礎知識
損害保険の主な役割について見てきましたが、なんとなく聞いたことあるな、という企業が多いのではないでしょうか。
各企業ともに多くの広告を流しています。次に損害保険業界を志望するにあたって必ず抑えておきたい事項を3つ紹介いたします。
1.収入の半分は自動車保険
日本の損害保険会社の収入のうち約半分は自動車保険です。そして2割くらいが住宅火災保険ですのでこの2つで収入の7割程度を占めます。
主にこの2つは代理店経由での販売が多い保険ですので必然と代理店管理が損害保険会社の重要な仕事になります。
いかに代理店の人に保険を理解してもらうかや困ったときの相談相手になってあげられるかが大切です。
2.損害保険は経営者を応援する
例えばホリエモンが宇宙へ飛ぶロケットを開発しています。ロケットが無事に宇宙に到達する確率はまだ低いですよね。
うまくいかなかったときの保険をかけておかないと次の挑戦のためのお金がすぐ尽きてしまいます。保険が経営者の挑戦を支えているのです。
3.お茶の間から宇宙まで
損害保険業界の事業の幅広さを表すのに「お茶の間から宇宙まで、鉛筆からロケットまで」というフレーズがよく使われます。
住宅火災保険の対象に家財をいれればリビングの家具も保証してもらえます。
一方で石油タンカーに保険が必要であったり衛星の打ち上げに携わることもあります。
誇張ではなく本当に「お茶の間から宇宙まで」幅広い分野で保険は活躍しています。
損害保険業界の正味収入保険料ランキング
損害保険業界の正味収入保険料のランキングです。3メガ損保グループが群を抜いて大きいというのがお分かりいただけるかと思います。
それ以外にはダイレクト系のソニー損保やアクサ等が続きます。最近はどこかの企業が3メガに吸収されるといった動きもなく落ち着いてきています。
安定的に収益の稼げる業界であるといえるでしょう。
損害保険業界の現状と今後の動向
次に損害保険業界の現状と今後の動向について解説します。
3メガに集約されてあまり動きが大きくない業界ではありますが今業界で起きていること、今後の流れを理解して必要な人材やスキルを理解しましょう。
現状
損害保険業界は現状は安定していますが岐路に立ちつつあります。そこで抑えておいていただきたいトピックを3つ上げます。
1.保険契約高は緩やかに右肩上がり
近年は地震や台風といった災害が非常に多かったですよね。
異常気象災害による被害を保険でカバーしたいと考える人も増えています。またリスクが高まり保険料も上がっていますので単価も上がりました。
企業努力というよりは異常気象が増えていることによる保険料収入の増加であり市場が伸びているとは言えない状況です。
2.生命保険事業も大きい
こちらは東京海上ホールディングスの決算資料です。
東京海上ホールディングスの収入の内訳をみると3割が損害保険、2割が生命保険、5割が海外事業となっています。
損害保険会社なのですが国内の損害保険事業は全体の3割しかない、というのが実態です。生命保険も損害保険の半分くらいの規模がありますね。
国内の損害保険料は緩やかに増加しているものの成長率は高くなく損害保険会社は別の事業も強化しています。
3.ダイレクト型の躍進
保険商品自体の内容は正直どの企業もそこまで変わりません。すると必然的に価格勝負となります。
どうしても代理店を介すると代理店への販売手数料が増え消費者価格が上がってしまいます。
そこでソニー損保のようなダイレクトにインターネットで販売する企業が価格面で優位になり業績を伸ばしています。
代理店販売型の既存のモデルを見直さないといけない時期に来ていると考えられます。
今後の動向
国内の損害保険市場が大きく伸びない中で損害保険業界各社が次に何をしようとしているのか。最近の流れをこちらも3つほどご紹介します。
1.シェアリングエコノミーと保険
元々の保険は自動車や家を保有してそれに対する保険をかけていました。これが最近は車も家もシェアするものに変わりつつあります。
他人の車を借りて運転することもできるようになってきました。こうした社会の新しい動きに対して保険も形を変えていかないといけません。
SOMPOホールディングスはベンチャー企業のakippaに投資をしました。こうした新しいシェアリングエコノミーに対する新しい保険の在り方が議論されています。
事業多角化の動き
上で紹介した通り東京海上ホールディングスは生命保険事業が大きくなってきました。
またSOMPOホールディングスは介護事業を開始し介護業界ではトップ3に入る規模となっています。
既存の損害保険だけでなく様々なビジネスに挑戦するケースが増えてきています。
海外展開が進む
3メガ損保グループ揃って海外の損害保険会社の買収等に力を入れています。
市場自体が大きくなる見込みのない日本に比べ市場拡大を見込める海外の市場で勝負をしようと考えて多額の資金を投じています。
これからも海外展開は進んでいくものと思われます。
仕事内容
ここまで損害保険業界の概要や方向性について研究をしてきました。
ここからはより具体的に働くイメージをつけるためにどのような仕事があるのかを見ていきましょう。
大きい会社だからこそ様々な職種がありますので自分に合った職種があるか探してみましょう。
代理店管理
ここまでの損保業界の業界研究で見てきた通り代理店管理が非常に大切です。
代理店の方の困りごとに親身に相談に乗ったり、代理店が成果を出せる仕組みづくりをする必要があります。
法人営業
企業向けにオーダーメードの保険商品を組成します。特に大企業取引ではダイナミックな仕事で顧客の経営戦略をサポートする仕事になります。
関係者も多くリーダーシップを発揮して周囲を巻き込む力が求められます。
保険の審査
お客さまから預かった保険料を必要な人に正しく保険金としてお支払いする仕事です。
時に面倒であったり困っている人に対して厳しいことを言わないといけない時もあるかもしれません。
正義感のある人が向いていると思います。
資産運用
お客さまから預かった資産を不動産や債券、株式等を使って運用します。着実にお金を増やすことが求められます。
責任感の強い人が活躍できる職種でしょう。
アクチュアリー
統計の専門家です。リスクの定量化を行ったり保険料の算定を行ったりします。
保険会社や信託銀行にしかいない専門性の高い職種ですので、スペシャリスト志向の人が目指すべき職種です。
バックオフィス
正直バックオフィスをやりたいと言って入社する人は少ないのですが、金融は法規制が厳しくバックオフィスが重要です。
どんな仕事にも前向きに取り組めるような人が求められます。
損害保険業界に向いている学生
損害保険業界には様々な職種がありますので職種によって求められる資質が変わります。
代理店管理、法人営業
代理店管理、法人営業に向いている特性は以下の3つです。
- 共感力が高い
- 状況に柔軟に対応する
- 創造が得意
代理店や法人顧客の話をよく聞き悩みを共有することが第一歩です。
課題に対してどうすればよいのかを自発的に考え行動する創造力が求められます。
お客さまによって置かれている状況は大きく異なりますので、状況に応じた柔軟な対応ができるとお客さまから信頼されるでしょう。
資産運用・アクチュアリー
資産運用・アクチュアリーに向いている学生の特性は以下の3つです。
- 情報分析が得意
- わかりやすく整理して説明する
- 優先順位を明確にして取り組む
職業柄世の中で起きていることに敏感である必要があります。
情報にあふれるので何が重要なのかの優先順位をつけることが大切です。その中から情報を分析し行動を決定します。
多額のお金を動かす立場になりますのでなぜその意思決定をしたのかを分かりやすく説明する力が求められます。
審査、バックオフィス
審査・バックオフィスに向いている特性は以下の3つです。
- 公平感を与えられる
- ミスをしない
- どんどんタスクを終わらせる
審査やバックオフィスは膨大な量の仕事に向き合います。
保険を必要とするお客さまに必要なお金を出すときも契約に従った公正な判断を求められます。また社内においても多くの部署があるので公平に接することが大切です。
仕事がどんどん降ってきますのでミスをすると仕事が溜まります。ミスなくどんどん仕事を終わらせていく正確さとスピードの両方が求められるでしょう。
まとめ
ここまで損害保険業界の業界研究を行ってきました。
大企業で様々な分野にチャレンジをしていますので、多くの学生の方が自分の能力を発揮できる業界だと思います。
損害保険業界自体が大きく伸びるというわけではありません。その分多角化や海外への挑戦の機会はあり非常にチャレンジングな状況かと思います。
大手企業が多く研修体制もしっかりと整っています。
まず社会人としてのスタートをしっかりと先輩や上司の姿を見ながら進めていきたいという人には魅力的な業界ではないでしょうか。
ちなみに本サイトでは、損害保険業界以外にも様々な業界について解説しています。
多くの業界を知り、就活の視野を広げていきましょう!
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