はじめに

「石油業界ってどんな仕事をしているのだろう?」「石油業界はこれから伸びる業界なの?」と疑問に感じている人は多いのではないでしょうか?

石油は私たちの生活に欠かせないものではありますが、具体的にどのようなビジネスや企業が存在するのか知らない人は多いと思います。

また、世界で温室効果ガスの排出量をゼロにする「脱炭素化」が目指されている中、石油業界の将来性に不安を感じている人も多いでしょう。

そのためこちらの記事では、石油業界の概要今後の動向仕事内容から向いている学生まで徹底解説していきます。

石油業界に興味がある人はもちろん「そもそも石油ってなんだろう?」「何に使われるの?」とこれまで石油に関心がなかった人でも、こちらの記事を読めば簡単に石油業界の全体像が把握できますよ。

ぜひ最後まで目を通してみてください。

業界研究をする前に

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石油業界について理解を深める前に、まずは業界研究の目的をしっかり確認することから始めましょう。

業界研究の目的は、業界の情報を集めることだけではありません。

業界の情報と自己分析の結果と照らし合わせることで、自分に合った業界か見極め、入社後のミスマッチを防ぐことが業界研究の正しい目的です。

そのためこの後の記事を読むときは、石油業界について理解を深めながらも「本当に自分に合う業界・仕事内容なのか」を常に意識しながら読み進めてみてください。

ちなみに業界研究をまだ始めたばかりの人ややり方がよく分からないという人は、こちらの記事も合わせて読んでみてくださいね。

業界研究,やり方

業界研究の目的・やり方を正しく理解したうえで、石油業界への理解を深めていきましょう。

石油業界とは

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石油は上図の流れで私たちのもとに届いています。

石油は私たちの生活に欠かせないものです。しかし、具体的にどのようなビジネスや企業が存在するのか知らない人は多いのではないでしょうか?

そのためまずは、石油業界の概要売上高ランキング基礎知識について解説していきます。

石油業界が気になる人はぜひ参考にしてください。

石油業界の概要

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石油業界は大きく分けて以下の3つの分野があります。

それぞれの役割や主力企業を理解し、石油業界の全体像を把握しましょう。

1. 石油開発会社

産油国から鉱区権益を取得して、地質調査原油の探鉱・開発をするのが石油開発会社

国際石油開発帝石(INPEX)や石油資源開発(JAPEX)が主力企業です。

2. 石油元売り会社

石油の輸入・精製・販売までを一貫して行っているのが石油元売り会社

ENEOSホールディングス(旧:JXTGホールディングス)や出光興産が有名です。

3. 燃料商社

石油元売り会社が販売しきれない石油製品を買い取り、「無印スタンド」と呼ばれる石油元売り会社の系列に属さないガソリンスタンドへ販売するのが燃料商社です。

伊藤忠エネクスや三菱商事エネルギーなどが主力企業で、石油販売以外に電気・自動車事業なども行っています。

ちなみになぜ石油元売り会社が石油製品を「販売しきれない」という事態が発生するのか、疑問に思う人もいるのではないでしょうか?

その理由は次の「石油業界の基礎知識」にて解説します。

石油業界の基礎知識

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ここでは、石油業界を志望するなら必ず知っておくべき基礎知識3点紹介します。

「そもそも石油って何だろう?」・「ガソリン以外に用途はあるの?」と疑問に思っている人はぜひ参考にしてください。

1. そもそも石油とは?

石油とは、地中から採取された原油原油から精製された石油製品の総称です。

通常、原油のままでは燃料として利用できず、精製することでガソリン・灯油・軽油・重油・潤滑油などの石油製品が製造されます。

石油は液体のため、固体である石炭や気体である天然ガスなどの他のエネルギー源よりも運搬・保管しやすいのが特長です。

2. 石油の特性

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石油には、「供給過剰」「連産品特性」という2つの特徴があります。

まず「供給過剰」についてですが、石油製品は必要な分だけ効率よく生産することはできません。

緊急時や災害時にも安定供給できるよう、常に需要よりも供給が上回るように生産する必要があるからです。

また「連産品特性」というのは、1つの製造工程の中で2つ以上の製品が生産されること。

原油を精製すると、ガソリン・灯油・軽油・重油などのすべての石油製品が一定の割合で生産されます。原油から特定の石油製品のみを生産することはできません。

この「供給過剰」と「連産品特性」という2つの特徴により、石油元売り会社は必要な石油製品を必要な分だけ生産することはできない仕組みになっています。

そのため石油元売り会社は、自社で「販売しきれない」余剰分を燃料商社へ販売しているのです。

3. 石油の用途

石油=ガソリンと思われがちですが、その他にも様々な用途があります。

石油の主な用途は3つあり、それぞれの割合は以下の通りです。

  1. 輸送用燃料(約40%)
  2. 産業用燃料(約40%)
  3. 石油化学用原料(約20%)

1つ目の「輸送用燃料」は、その約90%が自動車用のガソリン・軽油であり、残りは航空機用のジェット燃料や船舶用の重油などとして使われています。

2つ目の「産業用燃料」とは、ビルや店舗などの業務用、工業用のボイラー、火力発電用の燃料のこと。

3つ目の「石油化学用原料」は、石油製品の1つであるナフサから生産されるプラスチック・ペットボトル・ゴム・タイヤなどの原料のことです。

石油業界の売上高ランキング

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引用元:有価証券報告書

石油業界の売上高ランキングは上図の通りです。

石油元売り会社が上位3位を占め、4位が石油開発会社、5位が燃料商社という結果になっています。

また、石油製品の販売シェアは以下の通りです。

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引用元:石油通信社「平成29年 石油資料」

石油製品の販売シェアは、ENEOSホールディングスと出光興産が2強となっています。

かつてシェア2位だった出光興産とシェア4位だった昭和シェル石油が2019年4月に統合したことで、シェア3位だったコスモエネルギーホールディングスに大きく差をつけました。

石油業界の現状と今後の動向

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入社後長く働き続けるためには、業界の現状や今後の動向を知ることは非常に重要です。

そのためここからは、石油需要の動向やこれからどんな新事業が展開していくのか石油業界の未来について解説していきます。

現状

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引用元:IEA(国際エネルギー機関)

国内の石油製品需要は、戦後の高度経済成長期から1990年代までは増加傾向にあったものの、2000年代から減少傾向に転じ、今後さらに減少していくことが予測されています。

石油製品の需要が減少している主な要因は次の3点です。

  • 地球温暖化対策による脱炭素化
  • エコカー・電気自動車の普及
  • 少子高齢化・人口減少

脱炭素化とは、地球温暖化につながる温室効果ガスの排出量をゼロにすること。

地球温暖化が問題視されてから、石油や石炭などの二酸化炭素を排出するエネルギーではなく、太陽光や風力などの再生可能エネルギーへの転換が求められています。

また、エコカー・電気自動車の普及や少子高齢化・人口減少によりガソリン販売量が減少。

さらに2020年以降はコロナ禍での外出自粛の影響を受け、ガソリンやジェット用燃料の販売量も減少しています。

今後の動向

これから石油需要はさらに減少していくことが予測されます。そのため、次の3点が今後の石油業界の成長のカギとなるでしょう。

1. 電力・再生可能エネルギー事業への参入

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今後は電力や太陽光・風力などの再生可能エネルギー事業への参入がさらに拡大し、石油産業から総合エネルギー産業を目指す動きが活発化するでしょう。

すでに石油元売り会社では各社で太陽光・風力以外にも地熱発電・バイオマス発電などの新エネルギー事業を展開しています。

またENEOSホールディングスは、台湾での洋上風力発電(海洋上における風力発電)プロジェクトを進めており、さらに総合エネルギー産業へと近づいていくでしょう。

2. 海外事業

国内の石油需要は減少していますが、東アジアにおける石油需要はいまだ増加傾向です。

したがって今後は、海外の成長市場における事業拡大が重要となるでしょう。

海外事業はすでに各社で展開しており、ペットボトル等の原料となるパラキシレン事業や潤滑油の製造・販売などを行っています。

また出光興産は2018年よりベトナムでの給油所事業に参入し、本格的に海外事業を展開し始めました。

3. 給油所事業の多角化

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ガソリン・軽油の販売量の増加が見込めない給油所では、事業の多角化が進められています。

洗車・中古車販売・カーリース・コンビニ併設などの事業を展開し、いかに石油製品以外で集客を図るかが今後さらに重要となるでしょう。

石油業界の仕事内容

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業界研究では、事業内容だけでなく具体的な仕事内容について理解することも重要です。

そのためここでは、石油業界における代表的な6つの仕事を紹介します。

自分の興味や長所と照らし合わせながら、石油業界への理解をさらに深めていきましょう。

1. インフラ開発

インフラ開発は、油田調査や採掘施設の設計・建設をする仕事。

資源開発を行う「石油開発会社」での仕事です。

2. プラント管理

プラント管理は、石油精製や石油化学製品を製造するためのシステム設計を行う仕事です。

プラントの新設・補修も担当します。

3. プロセス管理

プロセス管理は、石油精製および石油化学プラントの運転・管理を行う仕事。

石油の需要予測を行い、生産計画・進捗管理を担当します。

4. 研究開発

石油の精製プロセスや機能材について研究し、石油製品の開発を行うのが研究職の仕事です。

新商品の開発だけでなく、コストを抑えた精製方法や新機器などの収益化に関する研究も行います。

5. セールスエンジニア

セールスエンジニアは、潤滑油や石油化学製品の販売・メンテナンスを行う技術営業職です。

卸先へ石油製品を販売しつつ、専用機器のメンテナンスを担当します。

6. 販売

系列のガソリンスタンドへの卸販売や、電力・ガスなどのインフラ企業へ石油製品・石油化学製品を法人販売する仕事。

これまで紹介した5つの仕事はすべて技術職でしたが、この仕事は全学部・全学科の学生が対象となる事務系の職種です。

石油業界に向いている学生

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最後に、石油業界に向いている学生について解説します。

次の3点に当てはまる場合は、きっと石油業界に向いている人と言えるでしょう。

  1. エネルギー事業に興味・関心がある
  2. 海外で働くことに抵抗がない
  3. 人々の暮らしを支える仕事がしたい

まず、石油業界の仕事やこれから拡大していく再生可能エネルギー事業に興味がなければ、石油業界で働いても楽しく仕事はできないでしょう。

また、石油業界では海外で仕事をする可能性があります。

そのためグローバルに働きたい方はもちろんですが、海外赴任に抵抗がない人が向いていると言えるでしょう。

最後の3つ目に関してですが、石油業界の仕事は私たちの生活に欠かせない重要な仕事。たくさんの人々の生活を支え、非常に多くの人に貢献できる仕事です。

そんな貢献性が高くやりがいのある仕事に挑戦したいという人は、きっと石油業界に向いているでしょう。

ぜひこの3点を参考にして、石油業界は自分に合っているのか確認してみてください。

まとめ

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「石油開発会社」・「石油元売り会社」・「燃料商社」の3つに分類される石油業界。

石油はガソリンなどの燃料だけでなく、火力発電の燃料やプラスチック・ペットボトルの原料としても使われる私たちの生活には欠かせないものです。

しかし近年は、国内の石油需要の減少にともない新事業の拡大が求められています。

今後はさらに総合エネルギー産業へ向けた取り組み海外展開給油所事業の多角化が進んでいくでしょう。

今回紹介した事業・仕事内容に興味をもった人や、人々の暮らしを支える仕事がしたい人はぜひ石油業界を視野に入れて就職活動してみてはいかがでしょうか?

ちなみに本サイトでは、石油業界以外にも様々な業界について解説しています。

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この記事を書いた人Mayuka