はじめに

就活では、自分なりの軸や基準をしっかりもつことが大事だとよく言われます。

しかし「就活の軸」という言葉こそよく耳にするものの、なぜ必要なのか、どのように作れば良いのか悩んでいる人も多いのではないでしょうか。

就活の軸はエントリーシート(ES)や面接で聞かれることもあり、就活を進めるうえで避けては通れないものです。

そこでこちらの記事では、就活の軸を作る目的やメリット、作り方から具体例まで徹底解説していきます。

記事を読んだらすぐに実践できる簡単な軸の作り方を紹介しますのでぜひ参考にしてください。

就活の軸とは

就活の軸とは、企業を選ぶときの基準となるものや仕事をするうえでゆずれない部分のこと。「企業選びの軸」や「選社軸」も同じ意味です。

自分が将来なりたい姿をイメージし、どんな仕事をしたいか、どんな働き方をしたいか考え、その理想を実現するための条件が就活の軸になります。

就活の軸はなぜ必要?

なぜ就活の軸をもつことが大事なのか、本当に必要なのか疑問に思う人もいるのではないでしょうか。

そのためここでは、就活の軸を作る目的やメリットを紹介します。

就活の軸はどんな場面で必要になるのか、逆に就活の軸がないとどうなるのかも合わせて解説しますのでぜひ参考にしてください。

企業選びが効率的になる

就活の軸を作ることで、企業選びが効率的になります。

もし就活の軸がなければ、一つひとつ企業を見ていき、自分に合うかどうかその都度考えていかなければなりません。

日本の上場企業だけでも3,800社以上ある中で、手当たり次第に企業を見ていくのは非効率的かつ至難の技。

また闇雲にエントリーしたところで、志望動機が上手く思い浮かばずなかなか選考を突破できない可能性もあります。

もし仮に内定を得たとしても「やっぱり自分には合わないかも…」と後から気づき、また就活を一からやり直さないといけなくなるかもしれません。

しかし就活の軸を作れば、自分がエントリーすべき業界や企業をある程度絞れます。

そして自分にマッチした企業だけに集中することで、余計な時間を使うことなく効率的に就活を進められるのがメリットです。

就活では業界研究や企業研究以外にも、自己分析や面接対策などやるべきことが膨大にあります。

効率的に企業選びをすることで限られた時間を有効に使いましょう。

ESや面接などの選考対策になる

「あなたの就活の軸は何ですか?」という質問は、ESや面接でほとんどの企業が聞く鉄板の質問です。

そのため就活の軸を作ること=選考対策でもあります。

就活の軸を考えずに選考に臨み、上記の質問に対して曖昧に答えてしまうと「仕事にこだわりがない、やる気のない人」という印象を与えかねません。

また、就活の軸は志望動機の根底となる部分です。自分がどのような基準で企業を選んでいるのか伝えたうえで、志望動機を話すと説得力が増します。

選考の場で熱意や本気度を伝えるためにも就活の軸は必須です。

企業とのミスマッチを防げる

就活の軸を作ることは企業とのミスマッチを防ぐことにも繋がります。

就活の軸を作らなければ、本当に自分に合った企業かどうか見極められません。

なんとなくで企業を選んでしまうと、自分に合っていない企業に入社を決めてしまう恐れがあり早期離職のリスクが高まります。

企業とのミスマッチを防ぐためには、しっかり自己分析したうえで就活の軸を作ることと企業を正しく理解することが重要です。

就活のゴール=内定獲得ではありません。自分に合った企業から内定をもらい、入社後自分らしく働くことがゴールです。

その目標を達成するためにも、まずは就活の軸を作ることから始めましょう。

就活の軸は3種類に分けられる

就活の軸を考えるということは自分の将来像をイメージすること。

そして将来像をイメージするときには「Being」・「Having」・「Giving」の3つの切り口があり、それによって就活の軸も3つに分類されます。

具体例とともに解説しますので、それぞれの違いを正しく理解してから就活の軸を作りましょう。

Being(どんな人物になりたいか)

どんな人物になりたいか・どんなスキルを身につけたいかという切り口で将来像を考えるのが「Being」です。

例えば、

  • チームを引っ張る存在になれること
  • 英語を使う仕事であること
  • 大学での研究内容を活かせる仕事であること

などの就活の軸はBeingに分類されます。

Having(年収や労働環境)

将来自分が手に入れたいものや環境という切り口で将来像を考えるのが「Having」です。

年収はどのくらいが良いか、どのような地位や名誉を目指すのか。そして労働環境や福利厚生に関する希望もHavingに含まれます。

例えば、

  • 年収が◯◯◯万円以上であること
  • 知名度の高い大手企業であること
  • 残業が少ない職場であること

などはHavingに分類される就活の軸です。

Giving(どのように社会に貢献したいか)

仕事を通してどう世の中に貢献したいか・どのように社会を変えていきたいかという切り口で将来像を考えるのが「Giving」です。

例えば、

  • 地域活性化に貢献できる企業であること
  • 社会格差を解消できる仕事であること
  • 頑張る人のサポートができる企業であること

などの就活の軸はGivingに分類されます。

ここまで3種類の就活の軸を紹介しましたが、3つの中で最も重要なのがGiving

なぜなら、いくらBeingとHavingの条件を満たしていてもGivingの条件が満たされなければ仕事のやりがいを感じられないからです。

そのため将来どのように世の中に貢献していきたいか、何のために仕事をするのか、Givingの視点で将来像を考え、それをもとに就活の軸を作っていきましょう。

このGivingの視点での就活の軸の作り方は次の章で解説します。3ステップで簡単にできるのでぜひ参考にしてください。

就活の軸の作り方

ここからは、前章で説明したGivingの視点での就活の軸の作り方を3ステップで解説していきます。

ノートとペンがあればすぐに実践できる内容ですのでぜひ試してみてください。

STEP1:過去の経験を振り返る

まず、過去に自分が誰かへ貢献した経験について振り返りましょう。

家族や友人など誰かに対して貢献した経験でも良いですし、アルバイト先やサークルなどの組織全体に貢献した経験でもかまいません。

このような経験を振り返ることで、どのような貢献をしたときにやりがいや喜びを感じるのか、自分の価値観が分かります。

大学時代だけでなく高校や中学時代までさかのぼり、思いつく限り挙げてみてください。どんな些細な内容でもかまいません。

数多くのエピソードを挙げることで自分の感情がプラスに動くときの傾向がつかめ、将来やりがいをもって取り組めそうなことやこれから目指すべき方向が見えてきます。

STEP2:経験を価値に置き換える

続いて、STEP1で列挙したエピソード中で特にやりがいを感じたことや嬉しかったものを3つ選出してください。

そしてその3つに関して、それぞれ自分は相手や組織に対してどのような価値を与えられたか考えてみましょう。

例えば次のようなイメージです。

  • 【経験】アルバイト先で在庫管理の仕組みを変えた→【価値】新しい視点・作業効率化
  • 【経験】部員の悩みを解消するために面談を実施した→【価値】コミュニケーションの円滑化・チームの意欲向上
  • 【経験】塾講師のアルバイトで生徒の成績UPに貢献した→【価値】目標達成のサポート・安心感

このように過去の「経験」を「価値」に変換することで、自分がやりがいをもって社会に提供できる価値が見えてきます。

STEP3:仕事に当てはめて具体化する

最後に、STEP2で考えた「価値」をより具体化して軸を完成させましょう。

具体化するときのポイントは次の2点です。

  1. どのような人に対してどのような方法で貢献していきたいのかターゲットと手段を考える
  2. 自分が仕事をすることで世の中をどう変えていきたいのかBefore/Afterのイメージをもつ

ポイントを押さえたら次のようなイメージで具体化してみてください。

  • 【価値】新しい視点→【軸】社会を支える様々な企業に対し、新たなサービスを生み出すことで世界の常識を変えていける企業であること
  • 【価値】コミュニケーションの円滑化→【軸】居心地の良い空間を提供することで、世の中の頑張る人たちを応援できる企業であること
  • 【価値】目標達成のサポート→【軸】目標に向かって努力している人に対して一人ひとり寄り添い、成長や夢のサポートができる企業であること

これでGivingの視点での就活の軸は完成です。

そしてこのGivingの視点での就活の軸を実現するために、どのような環境が必要か、どんな人物になるべきか考えることがHavingとBeingの視点での就活の軸に繋がります。

将来何のために仕事をしたら良いのか、どんな仕事であればやりがいをもって働けるのか分からないという人は、ぜひこの方法で就活の軸を作ってみてください。

就活の軸がどうしても作れないときは

前章で紹介した方法を試しても、過去に誰かへ貢献した経験が思い浮かばなかったり、考える中で行き詰まってしまうこともあるかもしれません。

そんなときは、企業理念から就活の軸を考えるという別な方法もあります。

どのような方法かというと、まずは志望業界だけでなく様々な業界の企業理念をとにかくたくさん調べてみてください。どの企業も必ずホームページに企業理念が載っています。

企業理念を調べたら、共感するかしないか一つひとつ振り分けていきましょう。

そして共感すると思った企業理念に何か共通項はないか探してみてください。共通項=将来自分がやりたいことであり、就活の軸を考えるヒントになります。

ただ多くの企業理念を調べる必要があるため、前章で紹介した方法よりも時間がかかってしまうのがデメリット。

もし就活の軸を考えるうえで行き詰まってしまった場合は、最終手段としてぜひ試してみてください。

業界ごとの具体例

続いて業界ごとに分けて就活の軸の例文を紹介します。

就活の軸だけでなく軸のもととなった過去の経験も合わせて紹介するのでぜひ参考にしてください。

IT

【就活の軸】新たなサービスを生み出し、世界の常識を変えられる企業であること

【過去の経験】アルバイト先で仕組みを変えたことにより作業効率を上げられた

不動産

【就活の軸】居心地の良い空間を提供することで、世の中の頑張る人を応援できる企業であること

【過去の経験】部員の悩みを解消するために面談を実施した

金融

【就活の軸】地元企業の発展に貢献できる企業であること

【過去の経験】ゼミの活動を通して地域活性化のためのイベントを開催した

食品

【就活の軸】食を通して人を繋ぎ、世界中の人々に貢献できる企業であること

【過去の経験】国際交流サークルで、国籍や文化が違くても一緒に食事をすることで絆が生まれた

人材

【就活の軸】一人ひとりに寄り添い、成長のサポートができる企業であること

【過去の経験】塾講師のアルバイトを通して人の夢や成長を支援することにやりがいを感じた

就活の軸を作った後の注意点

ここまで就活の軸のメリットや作り方、具体例を解説してきました。

今まで紹介した内容を参考にしていただければきっとすぐにでも就活の軸を作れるでしょう。

しかし、就活の軸を作った後に行き詰まってしまうこともあります。

そのため就活の軸を作った後は、これから紹介する注意事項に当てはまっていないか必ず見直すようにしてください。

どの企業にも当てはまる軸は深掘りが必要

就活の軸があまりにも抽象的で、どの企業にも当てはまってしまう内容であれば見直しが必要です。

就活の軸は企業選びを効率化するためのもの。どの企業も当てはまり、業界や企業を絞れない軸であれば意味がありません。

例えば「社会に貢献できること」・「人々を笑顔にできること」などは要注意。

どんな問題を解決することで社会に貢献したいのか、どのような人をどうやって笑顔にしたいのか深掘りが必要です。

また「チームで働くこと」・「企業理念に共感できること」という軸は、企業側からすると当たり前だと思われてしまうため避けた方が良いでしょう。

企業という組織である以上チームで働くことは必須ですし、企業理念に「なぜ」共感したのか自分自身の考えや価値観が重要だからです。

就活の軸を作ったら、どの企業にも当てはまる抽象的な内容になっていないか、企業として当たり前な内容になっていないか必ず確認しましょう。

軸の優先順位に気をつける

就活の軸はBeing・Having・Givingの3種類があり、Givingが最も重要だと「就活の軸は3種類に分けられる」の章で説明しました。

ただ、Being・Havingの軸ももちろん重要です。いくらやりがいを感じる仕事でも、労働環境が合わず理想の将来像に近づけないのであれば長く働き続けることはできません。

しかし、最初からBeing・Havingの軸にばかりこだわってしまうのは危険です。

待遇や福利厚生を優先して企業選びをしてしまうと、視野が狭くなり本当に自分に合った企業を見つけられません。

Being・Havingの軸はあくまでGivingの軸のプラスアルファとして捉え、志望する企業をある程度絞ってから考えるようにしましょう。

軸にこだわりすぎない

就活の軸は一度作ったら完成ではありません。就活を進める中で鮮明になっていき、ときにはがらりと変わることもあります。

就活の「軸」であるからブレてはいけない、それが絶対だと思い込む必要はありません。

軸がコロコロと変わりすぎてしまうのは良くありませんが、軸にこだわりすぎて視野が狭くなってしまうのはそれ以上に良くないことです。

就活の軸を一度作ったとしてもあくまで仮の軸だと考え、就活を進めるうえで必要があれば柔軟に変えていきましょう。

自分の軸に当てはまらなくても魅力に感じる企業に出会ったときは、なぜ魅力に感じたのか考えることでさらに自己分析が深まります。

視野を広く就活を進めていき、新しい考えや発見を柔軟に取り入れながら就活の軸に磨きをかけていきましょう。

まとめ

就活の軸は、効率的な企業選びをしていくうえでなくてはならないもの。自分なりの軸を考えることで、ESや面接などの選考対策にもなりますし入社後のミスマッチを防げます。

就活の軸と一言でいってもBeing・Having・Givingの3つに分類され、それぞれ分けて考えていくことが本当に自分に合った企業を見つけるためのポイントです。

また、就活の軸を考えることは自己分析の一環。就活の軸に関する内容もしっかり自己分析ノートにまとめていきましょう。

自己分析ノートの書き方・作り方については以下の記事で解説しています。

【自己分析ノートの書き方・作り方を解説】なぜ自己分析をするならノートにするのか?書いた後の活用方法まで具体例とともに紹介

今回紹介した軸の作り方や例文を参考に、さっそく就活の軸を作ってみましょう!

この記事を書いた人Mayuka