はじめに
近年ではジョブ型雇用と呼ばれる雇用形態をとる企業が増えてきています。
キャリア形成や就活にも影響があるので学生のうちから理解しておくことが望ましいです。
とは言え「ジョブ型雇用ってなに?」「就活にどんな影響があるの?」などと疑問を感じている方も多いでしょう。
そこでこの記事ではジョブ型雇用と就活の関係性について紹介します。
通常の雇用形態であるメンバーシップ型とも比較しながらわかりやすく解説しますので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
目次
ジョブ型雇用とは
ジョブ型雇用とは、業務内容を明確にした上で契約を結ぶ雇用形態のことです。
実際に働き始める前から業務内容が明らかになっているため、あなたのやりたい仕事が選べます。
また、採用においては業務を問題なく行えるスキルがあるかどうかがとても重要です。
そのほかジョブ型雇用は以下のような特徴をもっています。
- 転勤がない
- 報酬はスキルに依存する
- 研修制度はない
- 一括採用の概念がない
- いつでも解雇できる
①転勤がない
ジョブ型雇用では基本的に転勤がありません。
仕事内容はすでに決まっており、違う仕事を任されることは無いからです。
さまざまな仕事を経験して管理職になるといったキャリアアップの視点があまりありません。
そのため、同じ仕事をし続けて専門性を高めていく働き方になります。
また、転勤がないため出産・育児や親の介護などと両立しやすいでしょう。
②報酬はスキルに依存する
収入に関してはスキルに応じて変わります。
長く勤めたり年齢が上がったりしてもスキルが高くなければ報酬は低いままです。
逆に、入ったばかりであったり年齢が若かったりしてもスキルさえあれば高い報酬を得られます。
実力主義の働き方だと言えるでしょう。
③研修制度はない
ジョブ型雇用ではすでにスキルを持っている人材を採用するため社内での研修制度はありません。
スキルに応じて報酬が支払われるため、働き手が自ら進んでスキルを身につけていく必要があるのです。
自分のペースで学べるという利点もありますが、自制心がないとスキルアップを目指すのが難しい側面もあります。
④一括採用の概念がない
ジョブ型雇用には一括採用の概念はありません。
人が足りなくなった際に業務を行えるスキルをもった人材を採用するからです。
募集時期が定まっていないため募集を探すのが難しいこともありますが、自由なタイミングで仕事を探せるという利点もあります。
⑤いつでも解雇できる
ジョブ型雇用では基本的にいつでも解雇できます。
業績が悪化したり業務に見合うスキルがないと判断されたりした場合には解雇される可能性があるのです。
ただし、日本においては議論が分かれています。
メンバーシップ型との違い
新卒一括採用をはじめとし、日本で一般的に行われている採用方法はメンバーシップ型と呼ばれます。
総合職としてまとめて多くの人を雇い、その後にそれぞれの適性を見極めながら人材を配置していく方式です。
メンバーシップ型とジョブ型雇用の違いとして以下5つが挙げられます。
- 転勤の有無
- 報酬の体系
- 研修制度の有無
- 採用方式
- 解雇の取り扱い
①転勤の有無
転勤においてはそれぞれ以下のようになります。
- メンバーシップ型:転勤あり
- ジョブ型雇用:転勤なし
メンバーシップ型ではそれぞれの適性を見極めるために複数の仕事を経験させます。
その過程で異動や転勤が発生するのが一般的です。
それに対してジョブ型雇用では異動や転勤はほとんどありません。
「育児や介護などをのびのびと行いたい」「住む場所は自分で決めたい」という場合にはジョブ型雇用が向いているでしょう。
②報酬の体系
報酬体系における違いは以下の通りです。
- メンバーシップ型:年功序列
- ジョブ型雇用:スキルによって決まる
メンバーシップ型では、年齢を重ねたり長く勤め続けたりすることで報酬が上がっていく年功序列制が一般的です。
ジョブ型雇用では年齢や勤務歴は関係なくスキルと成果に応じて報酬が決まります。
年齢を重ねるごとに報酬を高めたい方はメンバーシップ型、スキルに応じて報酬を伸ばしたい方はジョブ型雇用が向いているでしょう。
③研修制度の有無
研修制度については以下のようになっています。
- メンバーシップ型:あり
- ジョブ型雇用:なし
メンバーシップ型では同じ人に長く会社で働いてもらうことが前提になっているため、社員のスキルアップに協力的です。
研修制度を使って社員のスキルを高め、業務効率アップを目指します。
それに対してジョブ型雇用はすでにスキルのある人材のみを採用するので研修制度はありません。
働き手が目指したい報酬ややりたい業務に合わせて自らスキルアップをしていく必要があるのです。
学ぶ機会を提供してもらいたい方はメンバーシップ型、自分のペースで学びたい方はジョブ型雇用が向いています。
④採用方式
採用方式の違いは以下の通りです。
- メンバーシップ型:新卒一括採用
- ジョブ型雇用:空きが出たらその都度採用
メンバーシップ型では長く働いてもらうことが前提なので若い人材を一括で採用します。
研修や転勤などを課しながら徐々に社員を育てていくのです。
反対に、ジョブ型雇用ではスキルのある人材を雇用するため人手が足りなくなったタイミングで適切な人を採用します。
一度入った会社で長く働き続けたい方や募集時期にあわせて準備をしたい方はメンバーシップ型が向いているでしょう。
自分がやりたい仕事に自分のタイミングで就きたい方はジョブ型雇用が向いていますよ。
⑤解雇の取り扱い
解雇の取り扱いについては以下のような違いがあります。
- メンバーシップ型:基本的にできない・終身雇用
- ジョブ型雇用:いつでも解雇できる(日本では議論がある)
メンバーシップ型では会社が働く機会を提供する義務を担っているため簡単には解雇できません。
働き手の権利が守られている反面、会社の業務効率が落ちる可能性があります。
業務効率が下がると売上も伸びにくくなり、結果として働き手の待遇が下がるという悪循環になる可能性もあるのです。
一方、ジョブ型雇用では業績悪化や成果が不十分であった場合など理由があればいつでも解雇できます。
とは言え、日本においてはいつでも解雇できることに対して反対意見があるのも事実です。
「いつでも解雇できるのは働き手の権利を侵害しているのではないか」と考えられています。
ジョブ型雇用が注目されている5つの理由
ジョブ型雇用はアメリカなどから日本に伝わり急速に広まってきました。
では、なぜ今になってジョブ型雇用が注目されているのでしょうか?
ジョブ型雇用が注目されている理由としては以下5つが挙げられます。
- テレワークが普及したから
- 専門知識のある人材が不足しているから
- 年功序列や終身雇用の維持が難しいから
- 同一労働同一賃金が採用されたから
- 経団連がジョブ型雇用を推進しているから
①テレワークが普及したから
テレワークが広まった影響でジョブ型雇用が注目を集めています。
明確に業務内容の割り振りが行われていないメンバーシップ型はテレワークに向いていないからです。
仕事の指示を事細かにしなければいけないメンバーシップ型では、画面越しのコミュニケーションで認識のズレが発生しやすくなります。
一方、やるべき仕事が明確であるジョブ型雇用なら最低限のコミュニケーションで済むでしょう。
テレワークにおける仕事の進めやすさからジョブ型雇用が注目されたのです。
②専門知識のある人材が不足しているから
AIの登場や仮想通貨市場の盛り上がりなど、技術革新が急速に進んでいる現代では専門知識のある人材が不足しがちです。
企業は即戦力となる人材を確保して時代の波に乗り遅れまいとしています。
そのため、スキルのある人材を採用できるジョブ型雇用に魅力を感じているのです。
企業が研修制度を整える間もなく次々と新しい技術が生まれているため、個人でスキルを身につけられる人材の価値が上がっています。
働き手としても自分の市場価値を高めて、高い報酬を得られることに魅力を感じる人が増え、ジョブ型雇用が注目されているのです。
③年功序列や終身雇用の維持が難しいから
人口減や経済の悪化によって需要が冷え込み、企業の経営が厳しくなってきています。
人件費を削減してコストを減らしながら経営を維持しようとする企業が増えているのです。
多くの企業には売上アップに貢献していない人材の給料もアップさせる年功序列、定年まで雇用し続ける終身雇用をする余裕がありません。
企業はメンバーシップ型と比べて、容易に解雇できるジョブ型雇用に魅力を感じているのです。
④同一労働同一賃金が採用されたから
厚生労働省が「同じ労働をする人には同じ賃金を支払うべき」とする同一労働同一賃金を採用しました。
メンバーシップ型の年功序列制は同一労働同一賃金に反する仕組みです。
時代の流れにあわせて企業のあり方も変わってきています。
今後はさらに同一労働同一賃金が当たり前になっていくためジョブ型雇用も広まっていく可能性が高いでしょう。
⑤経団連がジョブ型雇用を推進しているから
日本の経済を活性化させることを目的としている日本経済団体連合会(略して経団連)がジョブ型雇用を推進しているのです。
業績が伸び悩んでいる企業の中には新卒採用を実施しない企業も多くあります。
しかし、若い人材が入っていかない企業は短期的な経営はうまくいっても長期的に業績アップする見込みは低いでしょう。
こういった企業が増えれば日本経済が衰退していってしまいます。
経団連は経済を活性化させるためにジョブ型雇用を推進し、若い人材が活躍できる場を作ろうとしているのです。
ジョブ型雇用における4つのメリット
ここまでジョブ型雇用について紹介しました。
しかし「働き手にとってジョブ型雇用にどんなメリットがあるの?」と疑問を感じた方もいるでしょう。
ジョブ型雇用は以下4つのメリットがあります。
- 得意なことに集中できる
- 仕事を通じてスキルアップができる
- 適正な報酬が得られる
- 転勤や異動が少ない
①得意なことに集中できる
ジョブ型雇用では業務の範囲がしっかりと決められているため、あなたが得意なことや好きなことに集中できます。
メンバーシップ型のように「あの人が休んだからこの仕事もやって」などと言われることがないのです。
苦手なことは他の人に任せて、得意なことや好きなことを仕事にできるのでやりがいを感じられるでしょう。
②仕事を通じてスキルアップができる
ジョブ型雇用は仕事をすることでスキルアップにつながります。
専門的な仕事が多く、誰でも簡単にできるような仕事はないからです。
報酬が得られるだけでなく、仕事を通じて自分自身が成長している感覚を得られるのは大きな魅力でしょう。
仕事に充実感を求めている方はジョブ型雇用でスキルアップを目指してみてください。
③適正な報酬が得られる
ジョブ型雇用では勤務歴が浅く若くても、スキルさえあれば高い報酬が得られます。
「あの人より成果を出しているのに報酬はあの人の方が高いなんて…」などと虚しい気持ちになる心配がないのです。
努力してスキルを身につければ評価されるため努力自体に意味を感じられますし、自分を適正に評価されることで自信がつきます。
若いうちから高い報酬を得たい方や適正な評価を得たい方はジョブ型雇用に向いているでしょう。
④転勤や異動が少ない
ジョブ型雇用では転勤や異動がほとんどありません。
業務内容がしっかりと定められているからです。
結婚・出産・育児などプライベートな人生プランも立てやすいでしょう。
プライベートを充実させたい場合にはジョブ型雇用を選ぶとよいかもしれません。
ジョブ型雇用における2つのデメリット
ジョブ型雇用にも以下のようなデメリットがあります。
- 自分でスキルを身につける必要がある
- 職を失うリスクが高い
①自分でスキルを身につける必要がある
すでにお伝えしている通り、ジョブ型雇用の場合には研修制度がありません。
仕事に必要なスキルは自分自身で身につける必要があるのです。
実際の業務で疑問点が生まれた場合にも基本的に自分で解決しなければなりません。
成果が出なければ解雇もあり得ますし報酬も低くなってしまいます。
自分を奮い立たせて勉強し続けられる人でないと長く仕事をしていくのは難しいでしょう。
②職を失うリスクが高い
ジョブ型雇用は業績悪化などが起こると解雇されてしまいます。
働き手の保護という観点からは弱い側面があるため、失業リスクについては貯金などで備えておく必要があるのです。
「解雇されるかもしれない」という不安を抱えながら働かざるを得ないのはジョブ型雇用の大きなデメリットでしょう。
就活にもジョブ型採用が導入されつつある
就活においてはジョブ型雇用の要素を取り入れたジョブ型採用が導入されてきています。
ジョブ型雇用は新卒に限らず人材が不足した際に募集をかけることです。
それに対してジョブ型採用は、新卒採用において業務内容を明らかにするジョブ型雇用の要素を取り入れたものになります。
ジョブ型採用では入社後にどの部署に配属されるか具体的な業務内容が明確です。
入社前から業務内容がわかるため、入社後に「やりたかった仕事ができない部署に配属された」という心配がありません。
ミスマッチが少なくなるのが大きな魅力です。
就活においてジョブ型採用をどう捉えたらよいか
従来のメンバーシップ型では、理念に共感できたり社風が好きであったりする会社への就職を決めることもできました。
しかし、業務内容が明らかになるジョブ型採用においては業務内容とあなたがもっているスキルから就職を検討する必要があります。
就活準備においても、企業研究などだけでなくやりたい仕事に必要なスキルを身につける作業も大切です。
ジョブ型採用の面接では、スキルを身につけるために行動したことをアピールすることになるでしょう。
ジョブ型採用にて就職したい場合には、やりたい仕事を明らかにしたり必要なスキルを身につけたりすることに時間を使ってみてくださいね。
まとめ
ジョブ型雇用について紹介しました。
従来のメンバーシップ型とは異なる性質をもっているため、就職やキャリアに対する捉え方を変えていく必要があります。
就活でジョブ型採用をしている企業はまだ少ないかもしれませんが、今後のキャリアを考える上でジョブ型への理解は必須です。
ジョブ型採用への応募も経験しておくと転職したいと感じたときの役に立つかもしれません。
また、ジョブ型雇用についてより詳しく知りたい場合にはジョブ型で就職したOB/OGを訪問してみるとよいでしょう。
OB/OG訪問については以下の記事で解説していますので参考にしてみてくださいね。
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