はじめに
証券業界は就活生に人気の業界の一つとして有名ですが、志望はしていても詳細な仕事内容や業界概要を知らない人は少なくありません。
ぼんやりとしたイメージが持たれることが多いため本記事を通して証券業界の業界構造を理解することが大切です。
そこで本記事では証券業界の仕事内容や業界の動向、向いている学生の特徴などを紹介していきます。
業界研究をする前に
証券業界の業界研究を始める前に、こちらで業界研究の目的を確認していきましょう。
業界研究の目的として、その業界が自分に合っているのか見極めることや就職後のミスマッチを防ぐことがあげられます。
業界研究はただ業界の知識を学べばよいわけではないのです。
その業界と自分があっているのか、この業界で自分が働くとしたらどうなるかなど意識して業界研究することが業界研究の質を高めるのに重要になります。
ただ業界研究を初めて行う人にとっては、どう業界研究をするべきなのかわからない人も少なくないでしょう。
業界研究が初めての人や業界研究のやり方を再確認したい人はこちらの記事で業界研究の方法について理解して業界研究をすることをおすすめします。
証券業界とは
まず皆様は証券というものがどういうものかご存知でしょうか?
証券とは一般的に有価証券のことを指し、例えば国債や株式、投資信託などが証券に当たります。
証券業界はそんな証券の中でも株式を主に取り扱う業界です。
ではそんな証券業界がどのようなものかをこちらで概要や基礎知識、実際の売り上げランキングを通して紹介していきます。
証券業界の概要
証券業界にはいくつかの証券会社に分類されており、それぞれで異なったサービス、商品を扱っています。
そこでこちらでは主な証券会社の分類について紹介していきます。
1.大手独立系
大手独立系は他社との資本関係がない独立した大手証券会社のことを指します。
これらは野村證券や大和証券が分類されており国内の証券業界でもトップシェアを誇る2社です。
大手独立系の証券会社は100年ほどの歴史があり情報の信頼度が高いことが特徴として挙げられます。
2.銀行系
銀行系はメガバンク3行を中心としたフィナンシャルグループに属する証券会社のことを指します。
銀行系証券会社としては、三菱UFJ証券HDやSMBC日興証券、みずほ証券があり証券会社としての規模は大手独立系についで大きいです。
銀行系証券会社は資本力が強みで様々な商品を取り扱うことができます。
3.準大手系
準大手系証券会社は特定地域にて地盤を持つ証券会社を指します。
証券会社としては銀行系に次ぐ規模で地域の顧客基盤を活かした地域密着型のリテール業務に強い会社が多いです。
準大手系証券会社としては東海東京証券や岡三証券などがあげられます。
4.外資系
外資系証券会社は、外国法人の証券会社の日本オフィスです。
日本の証券会社に比べて成果主義的な側面が強く、成果を上げさえすれば大きな収入を得られる可能性があります。
外国法人のため語学力がとても重要で外資系証券会社を目指す場合はビジネス英語を学ぶことがおすすめです。
代表例として、ゴールドマンサックスやモルガンスタンレー証券などがあり、世界最大手の証券会社のためそれだけ求められる力が大きくなります。
5.ネット系
ネット系証券会社はネット上で金融商品の仲介を行う証券会社です。
主に個人向けの金融商品を扱っており、主にカスタマーサポートやIT系の職種で採用が行われています。
ネット系証券会社の代表例としてはSBI証券や楽天証券、松井証券などがあります。
証券業界の基礎知識
こちらでは証券業界の基礎知識として証券業界の主な収益について紹介していきます。
1.売買委託料収益
売買委託料収益とは、投資家から注文を受けて株式や債券などの売買を仲介する際に発生する手数料のことです。
委託手数料は従来はどの証券会社でも同じでしたが1999年に委託手数料設定の自由化が行われた影響で証券会社ごとに違ってきました。
そのため売買委託手数料を引き下げて他証券会社と差別化を図ろうとする証券会社が増えたのです。
2.引受手数料収益
引受手数料とは、株式の発行者または売出人から株式等を買取、買取金額(引受額)と異なる値段で投資家に売ることで得られる差額のことです。
引受手数料は投資家への販売が出来ないと引受を行った証券を証券会社が買い取らなくてはなりません。
そのため引受業務においては投資家に買ってもらえる企業かの調査が重要です。
3.トレーディング収益
トレーディング収益は自己資金で株式や債券の売買を行った際に発生する利益です。
あくまでも、証券会社が自己の資金で運用を行うことで得られる利益のため購入した株式が大幅に下落した場合は損失となってしまいます。
そのため大きな損失を出さないためにも正確な市場調査が必要になってくるのです。
証券業界の売上高ランキング
こちらでは証券業界の売上高ランキングを紹介していきます。
ランキングを見てみると1位から5位までが、大手独立系証券会社と銀行系証券会社で占められていることがわかります。
6位以降を見てみるとネット系証券会社のSBI証券や楽天証券、松井証券などがあり昨今のデジタル化の影響が見てとれるのです。
証券業界の現状と今後の動向
業界研究において業界の現状や今後の業界全体の動向について理解することはとても重要です。
こちらでは証券会社の現状と今後の動向について紹介していきます。
現状
証券業界は現状以下のような課題や状況に立たされているといえます。
1.投資意識の低さ
日本人は預金に対する信仰が高く証券投資に対しては「ギャンブル」「ハードルが高い」といった意識がある人は少なくありません。
実際にバブル崩壊の折に多くの証券会社が廃業して有価証券の価値がなくなった等のことが起きたため投資に対して消極的になっているのです。
証券業界としてもまだまだ預金に対する証券投資の割合が低く膨大な預金をいかに投資にまわすかが証券業界の課題となります。
昨今の動きとしてはNISAやideCoといった新しい投資のシステムが作られ貯蓄から投資への流れを少しずつ進んでいるのです。
2.手数料の引き下げ
アメリカの証券会社が手数料を引き下げた影響が日本の証券業界にも来ています。
特に昨今規模を広げつつあるネット系証券会社は手数料の大幅な引き下げを行っており、その他の証券会社もこの引き下げをし始めました。
投資家にとってはうれしい流れですが証券業界としては重要な収益源である手数料を下げるのは痛手です。
中には将来的に手数料の無料化を構想に入れる証券会社もあるため今後手数料収益外の収益モデルの確立が必要とされます。
今後の動向
証券業界の現状を踏まえて今後この業界の方向性や将来について紹介していきます。
1.若者の投資に対する関心増加
上記で紹介した通り日本人は投資に対して意欲は比較的低いです。
しかし昨今仮想通貨やスマホで簡単に投資が出来る環境が出来たことで若者を中心に投資への関心が広がっています。
ただ関心があっても「やり方がわからない」という人が多いため証券業界としてはこのような人を取り込むための投資システムの確立や工夫が重要です。
日本証券業協会が掲げる主要課題において「金融・証券知識の普及啓発」というものがあります。
そこには学校向け、社会人向けに金融・証券教育の推進していく旨が述べられており今後投資に対する捉え方も変化していくでしょう。
2.ネット系証券会社の台頭
最近になって台頭し始めたネット系証券会社がさらに規模を増していくことが予想されます。
大きな理由としては昨今のコロナ禍の影響が大きいです。
実際に顧客の投資家と対面して行う業務が多い他証券会社と違いネット系証券会社はスマホ一つで完結できます。
そのためコロナ禍の影響を受けて対面での取引が減少したのに対してネット系証券会社の取引は増加しました。
これはスマホ等の媒体を使って行うネット系証券会社のサービスが始めやすいことも理由として挙げられるからです。
現在でも証券業界の多くの売上は大手独立系や銀行系が占めていますが規模の成長スピードとしてはネット系証券会社が高いです。
そのため今後も多くのネット系証券会社が台頭し証券業界全体を盛り上げていくことが予想されます。
3.海外への進出
日本の証券業界は今後海外進出も増えてくると考えられています。
日本は今少子高齢化の影響で年々人口が減っていっているため市場規模も小さくなっているのです。
そのため海外市場に進出してより大きな市場での取引を行い始めました。
例えば三菱東京UFJ銀行がモルガンスタンレー証券との合併会社を設立したことが記憶に新しく、近年ではみずほ証券も米国への進出を図る動きがあります。
このように今後も多くの証券会社が海外進出していくことでしょう。
証券業界の仕事内容
こちらでは証券業界の具体的な仕事内容について紹介します。
1.ブローカー業務
ブローカー業務とは、料金や手数料をもらって取引の仲介を行う業務です。
つまり投資家と証券市場をつなげる重要な仕事で、証券業界でもメジャーな業務で証券会社にとっても大きな収益となります。
2.ディーラー業務
ディーラー業務とは、証券会社が保有する資金をもとに株式や債券を売買して収益を上げる業務です。
証券会社は大きな資金力を持つため取引を行うとそれだけ株の売買も活発になります。
ディーラー業務には自己売買基準という保有できる証券の限度額のルールがあり、限度額内で自社の資金で投資、運用を行うのです。
このルールは証券会社が資金を投入しすぎることで経営が不安定になることを防いだり、一般投資家との利害の衝突を防いだりする目的があります。
経営が不安定にならないルールが設けられていますがディーラー業務はそれでも多くの資金を扱うため市場分析能力が必須です。
3.アンダーライター業務
アンダーライター業務は有価証券が発行された際に証券会社で買い取ってから顧客に販売する業務です。
アンダーライター業務では売れ残る可能性があるためこの業務を行えるのは第一種金融商品取引業者として認められた証券会社に限ります。
4.セリング業務
セリング業務はすでに発行されているか新しく発行される有価証券を一般の投資家に向けて買い入れの勧誘を行う業務です。
有価証券を証券会社が買い取ってから販売するアンダーライター業務と違って売れ残っても証券を買い取る必要がありません。
5.アセットマネジメント業務
アセットマネジメント業務は資産管理業務で投資信託などで預けてもらった資産を運用して長期的に手数料を得る業務になります。
単発的な利益を求めるブローカー業務と異なり、長期的な利益を求めるため昨今では多くの証券会社がアセットマネジメント業務に力を入れ始めています。
証券業界に向いている学生
こちらでは証券業界に向いている学生の特徴について紹介していきます。
1.情報分析が上手い
証券業界は証券市場の有価証券の情報をもとに投資家への有価証券買い入れの勧誘や売り出しを行います。
有価証券を用いた投資は結局有価証券の値動きによって利益を得るため、市場情報をもとにした値動きの予測をしなくてはいけません。
ただ市場には膨大な情報であふれており証券の値動きを予測するための情報の取捨選択がとても難しいです。
そのため与えられた情報をもとに分析を行うことが得意なことは証券業界に向いている特徴といえます。
2.じっくり検討してリスクのない決断ができる
じっくり検討してリスクのない決断ができることは証券業界に入る際に重要なことです。
まず証券業界が提供する金融商品の多くは必ずリスクが存在します。
リスクがあるからこそ投資に興味があってもできないという人は大勢いるのです。
なので少しでも顧客の不安感を払拭するためにもじっくり検討することでリスクを少なくする必要があります。
またディーラー業務を行う場合にも、自社のリスクを少なくかつ利益につながる証券取引を行わなくてはいけません。
リスクのない行動をとれるということはどんな行動がリスクのあるものかの判断もしやすいため向いている特徴といえるでしょう。
3.誠実で信頼される
誠実で信頼されることはどの業界でも重要な特徴ですが、証券業界では特に重要です。
特にアセットマネジメント業務では顧客の資産を管理し運用するため顧客側も信頼できる人に任せたいと考える人は少なくありません。
学生時代から誠実で信頼される人は、そう思われるようなふるまいや向き合い方をしているため証券業界でも役立つことでしょう。
まとめ
ここまでで証券業界について紹介してきました。
預金に対する信仰が強い日本において昨今多くの人が投資に関心を向け始めています。
特にスマホの普及で簡単に証券取引を行えるようになったため証券取引が身近なものになっているのです。
有価証券の投資は副業としても人気が出ているため今後証券業界は盛り上がっていくことが予想されます。
業界研究では他の業界を比較することでより深い業界研究が可能です。
そのため証券業界にしか興味がなくてもより深い理解をするためにも他業界の業界研究を行うことをおすすめします。
本サイトでは証券業界以外の業界研究をしてみたいという方向けに様々な業界の業界研究に役立つ記事をご紹介しています。
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