はじめに
物流業界の中でも一際大きな存在感があるのがこの倉庫業界です。
基本的に企業間の取引しかしませんので学生の方にはあまり知られていない業界かと思います。
昨今のインターネット通販の拡大やグローバル化の影響で規模を拡大しており今後が楽しみな業界の一つです。
物流業界や商社業界に興味のある人には穴場的な業界かもしれません。
この記事では倉庫業界の社会的役割や今後の動向、向いている学生の特徴等を解説していきます。
是非最後までご覧ください。
業界研究をする前に
倉庫業界の業界研究に入る前に業界研究をやる目的を明確にしておきましょう。
業界研究は業界の現状や将来性に関する情報を集めるだけでは片手落ちとなってしまいます。
業界特有の特徴と自分の特性や性格を擦り合せることで、自分にあった業界なのかどうかを考えることが大切です。
そして入社後「こんなはずじゃなかった」とミスマッチにならないようにすることが業界研究の正しい目的です。
倉庫業界について理解を深めながら「本当に自分に合う業界なのか、仕事があるのか」を考えながら読み進めてみてください。
ちなみに業界研究を始めたばかりの人ややり方がよく分からないという人は、こちらの記事も合わせて読んでみてくださいね。
業界研究の目的を正しく理解したうえで、電力業界は自分が活躍できそうなフィールドなのか見極められるようにしましょう。
倉庫業界とは
倉庫業界は物流業界の中でも中核的な役割を果たします。
お客さまの商品や材料を保管したりお客さまの要望に応じて出荷する等、物を保管するのに必要な機能を多く揃えます。
アマゾンや楽天の配送がとても速くて驚くことがありますね。
これは物流全体の最適化並びに倉庫業界のイノベーションにより可能となっていることなのです。
直接的に触れる機会はありませんが私たちの暮らしを豊かにすることにとても貢献してくれている業界であることを知っておいてください。
倉庫業界の概要
倉庫業界で活躍する企業にはいくつかの系統があります。
系統別にどんな企業があり、どんな特徴があるかを整理しましょう。
独立系
倉庫会社として独立した存在の企業です。古くからの財閥系や港湾流通系の会社があります。
三菱倉庫、三井倉庫、住友倉庫等がこの独立系の倉庫会社と言えます。
インフラ系
鉄道会社が貨物列車を多く走らせています。そのため貨物を保管するための倉庫が必要になるのは必然です。
近鉄エクスプレスやJR貨物グループの日本運輸倉庫等がインフラ系の倉庫会社です。
不動産・金融系
不動産会社は土地を仕入れて建物を建てることができますので、倉庫にも参入しています。
金融事業者は自社の大きな資本力を用いて大型の倉庫を立てています。
例えば大和ハウス工業はユニクロのファーストリテーリングと一緒に大規模な倉庫を建築、運用しています。
外資系
シンガポール系の倉庫会社プロロジス等が日本で大規模な倉庫を持っています。
楽天等と提携をして最先端のシステムを入れた倉庫を建築しているのが特徴です。
倉庫業界の基礎知識
どのような企業が倉庫業界で活躍をしているのかを見てきました。
ここからは倉庫業界を知るための欠かせない知識を紹介します。
1.倉庫業界の市場規模
倉庫業界の市場規模は約2.9兆円です。
過去数年は経済の堅調な推移とインターネット通販に伴う取扱量の増加によって規模が拡大されてきました。
インターネット通販は今後の成長が期待されており倉庫業界もそれに伴って堅調に業績を拡大していくものと思われます。
2.3つの倉庫の種類
倉庫には大きく分けて3つの種類があります。
- 普通倉庫業
- 冷蔵倉庫業
- 水面倉庫業
まず普通倉庫業はわかりやすく農産物や工場で生産された工業製品等をそのまま保管しておく倉庫です。
普通倉庫にもいくつかの種類が存在します。
- 1~3類倉庫
- 野積倉庫
- 貯蔵槽倉庫
- 危険品倉庫
- トランクルーム
1~3類倉庫が一番イメージのしやすい通販の商品等が保管されている倉庫です。
野積倉庫は自動車のように野ざらしにして雨風にあたっても良いものを保管しておく場所のことを指します。
貯蔵槽倉庫は小麦などを保管するのですがこうしたものは袋や容器に入れずそのまま積んでいきますよね。こうした若干特殊な倉庫を貯蔵槽倉庫としています。
危険品倉庫は法律で指定された危険物を保管するための倉庫であり関係法の規定を満たすものしか危険物倉庫と呼びません。
トランクルームはご存じの通り個人の方々月額レンタル等をするものですね。
冷蔵倉庫はその名の通り食肉や水産物や冷凍食品を保管しておく倉庫です。
水面倉庫は水に浮かばせて保管しておく倉庫です。例えば東京にある地名で木場や新木場という場所があります。
東京湾に木材を浮かべて保管していた場所ということでこの地名が付いているのですがこうした場所も倉庫となるのですね。
3.倉庫会社の役割
倉庫業界が顧客に提供するサービスは主に7つあります。
- 検品
- 入庫
- 保管
- 流通加工
- ピッキング
- 仕分け・荷揃え
- 出庫
検品は貨物が適正なものか、個数に間違いがないかなどをチェックします。
入庫は貨物の特性に合わせ決められた保管場所へ入庫させる仕事ですね。
保管については様々な保管・管理を行います。保管はもちろん在庫管理や商品日付管理、入庫順管理や機械番号管理なども行います。
流通加工では貨物が適正なものかを確認したうえで包装や詰め合わせ、ラベル貼り等まで幅広く対応が必要です。
ピッキングは商品を探し持ってくることが仕事ですが、最近では自動化やロボットの導入も進んでいますね。
仕分け・荷揃えはピッキングしてきた商品を配送先別に仕分けを行いトラック単位に揃えることです。
出庫は顧客からの指示に基づき倉庫から商品を出すことを指します。
このように倉庫業界は倉庫にものを入れるところから保管管理、出庫までのすべてを担います。
倉庫業界の売上高ランキング
倉庫業界の主なプレーヤーはこちらになります。
近鉄エクスプレス、上組が上位ですね。独立系やインフラ系が目立ちます。
不動産系の企業は物流や他の事業と混合してしまっていて倉庫事業だけの売上がわからずランキングに入りづらいためです。
外資も日本での事業売り上げを非公表にするケースが多く同じクランキング未反映となります。
倉庫業界の現状と今後の動向
ここからは倉庫業界で現在起きていることとこれから起きるであろうことをお伝えします。
ご自身の特性としてずっと安定した業界がいいのかある程度業界の変動があり刺激のある仕事をしたいのか等ここで考えてみてください。
現状
まずは現状のトピックスを3つお伝えします。
1.保管量と面積の推移
先ほど市場規模をご覧いただいたかと思います。
こちらの図は倉庫業界が実際に倉庫に預かっている資産がどれだけあるかと倉庫の面積を表しています。
ここ数年ずっと右肩上がりに成長してきているのがわかるかと思います。
倉庫業界自体は堅調に成長を続けてきており顧客の需要が相応に高い状態であると考えられます。
2.倉庫の大型化
成長市場には大きな資本をもって市場のシェアを取りに来るのはどの業界でも一緒です。
日本の倉庫業界でも楽天やZOZOといった大きな事業者が物流倉庫を多く使用します。
こうした大規模な事業者と倉庫事業者が一緒になって最先端の大規模倉庫を作る事例が増えています。
3.3PLとは
3PL(サード・パーティー・ロジティクス)と読みます。
企業の物流について部分的に商品の管理だけを請け負うのではありません。
物流をいかに構築するか、どのような運送会社や倉庫会社を使うべきかなどを提案し仕組みを構築する仕事です。
いわば企業の物流業務を丸ごと引き受けるというビジネスです。
倉庫業界の上流の仕事になりますがこの顧客の物流戦略を自ら倉庫会社がつくることができれば自社の倉庫を使ってもらいやすくなりますね。
倉庫業界もこうしたコンサルティングやBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)のような業務に取り組んでいます。
今後の動向
さて、ここからは物流業界の今後の動きについて見ていきます。
1.多機能化する倉庫
より多くのものが動くようになり様々なものが倉庫に格納されます。
倉庫も大規模になり何がどこにいつあるのかがわかりづらくなってきました。
そこでITの力を用いて今まで以上に倉庫の状況を把握できるようシステムが組まれます。
いかに顧客に対して使い勝手のいいシステムを提供できるかも倉庫業界の大切な仕事になってきています。
2.グローバルネットワークが重要に
物流がよりグローバル化するにつれて倉庫業界にもグローバル化の波が押し寄せています。
海外の倉庫会社が日本に進出してきたり日本の会社の海外進出も盛んです。
グローバルに活躍したいという志向を持っている学生の方にとっては魅力的な業界なのではないでしょうか。
3.不動産賃貸業の強化
倉庫運用のノウハウを持ちいて不動産賃貸業にも参入しています。
倉庫業界は外資や他業種からの参入もあり競争が激しいため倉庫事業だけで収益を維持するのは大変です。
強みを生かしながら新たな収益源を育てることを各社ともに考えています。
倉庫だけに限らず自分たちのノウハウを生かした不動産賃貸事業も今後の成長分野になってきます。
仕事内容
さて、ここまでは業界全体の話をしてきました。
ここからはより具体的に倉庫業界で働くとするとどのような仕事をやるのかを見ていきましょう。
倉庫管理
倉庫管理の仕事は先ほど出てきた倉庫業務の7つの仕事が滞りなく行われるよう管理をする仕事です。
実際にピッキングやラベリングのような単純作業は正社員がやるわけではありません。
アルバイトの方々がやりますのでその方々がしっかりと仕事ができる環境を整え指示を出すのが仕事になります。
多くの人を動かしますのでチームワークを重視するような方にふさわしい仕事と言えます。
倉庫事務
倉庫事務は倉庫自体を安定的に運用するための業務です。
故障個所があれば修繕の発注をしますし、周りの人が活動するために必要な資材を揃えたりします。
正直地味な仕事も多いですが、この仕事をやる人がいないと会社が円滑に運営できません。
必要なことを習慣化し着実に仕事をこなしていく人が活躍できる仕事です。
倉庫開発
倉庫開発は新しく倉庫を建築するための土地を仕入れたりどのような仕様の倉庫にするかを考え建築会社に発注する仕事になります。
非常に大きな金額を動かしますので、慎重に計画を立てしっかりと事業を推進する力が求められる仕事となります。
法人営業
倉庫業界の仕事は基本的に企業が取引相手です。
企業の製品や材料を保管しますので自社の倉庫を使用してくれる企業の開拓が必要です。
新規取引先の開拓や既存の取引企業が困っていることがないかのサポート等を行います。
企業相手ですので突発的な依頼がきたりもしますので柔軟な対応力が求められます。
倉庫業界に向いている学生
具体的な仕事を見てきましたので、倉庫業界で活躍できる学生の特徴を4つお伝えします。
- 必要なことを習慣化する
- 慎重に計画を立てる
- 仲間意識が強い
- 柔軟性がある
の4つです。一つずつ見ていきます。
必要なことを習慣化する
まず、倉庫業界の仕事は大切だけど地味な仕事が多いです。
これはインフラ関連の業界にはすべて共通して言えることなのですが、「できて当たり前」を提供するのがインフラです。
必然的に仕事はルーティーンになりがちです。
しっかりと日々の仕事を習慣とし毎日の仕事を着実にクリアしていくことにやりがいを持てる人は向いていると思います。
慎重に計画を立てる
申し上げた通り「できて当たり前」という高いレベルの仕事を求められます。
顧客あっての商売ですので顧客対応には慎重さが求められます。
物流が止まってしまったり計画通りに倉庫が建てられないようなことがあれば顧客に迷惑が掛かり他の倉庫会社に切り替えられてしまうかもしれません。
慎重に計画を立て顧客と共有し確実に仕事をこなす力が求められます。
仲間意識が強い
特に倉庫内のオペレーションはチームで行います。
倉庫内ではたくさんの人が連動して動いているためチームワークが欠かせません。
もちろん仕事をしていれば何かしらかの問題は起きるものです。
しかしそれをチームで乗り越えていくと顧客からの信頼を勝ち取ることができます。
倉庫業界はチームワークを重視する人材を求めているでしょう。
柔軟性がある
企業向けの取引をする際には突発的な依頼に応えることも必要です。
顧客も困っているからこそ相談してくるのですが前例がないことや経験の乏しい話も来ます。
どんな時にでも顧客に親身に寄り添い一緒に課題解決方法を探していく柔軟性が求められます。
まとめ
倉庫業界の業界研究を進めてまいりました。
なかなか学生の皆さんとは接点がなく理解が難しい業界かとは思います。
社会の縁の下の力持ちとして物流を支えているのが倉庫業界の特徴です。
倉庫内のオペレーションをするのではなく、倉庫の建設を考えたりITを活用した物流改善を考えたりと仕事の幅も広がりつつあります。
商社や物流業界をはじめ空運や海運を志望してらっしゃる学生の方は非常に狭き門にチャレンジを検討されてらっしゃるかと思います。
それらのすぐ横の業界に倉庫業界がありますので、是非選択肢に加えてみてはいかがでしょうか。
ちなみに本サイトでは、倉庫業界以外にも様々な業界について解説しています。
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