はじめに
エネルギーは現代の私たちの生活に欠かせないものであり、それなしでは生活も経済もままならないほど重要なものです。
夜になれば電気がつき、蛇口をひねればお湯が出てくるのもエネルギーのおかげですね。
一方、身近にありながらも実際どうやってエネルギーが届けられているのか、事業内容や規模感などは知られていないのではないでしょうか。
この記事ではエネルギー業界について基礎知識や今後の動向、向いている人の特徴などを詳しく解説していきます。
業界研究をする前に
この記事に目を通していただいている方は当然、業界研究に関心を持って閲覧していることと思います。
エネルギー業界について研究を進めるにあたって、まずは何のために業界研究をするのか目的をはっきりとさせましょう。
業界研究は情報を集めることが主な目的ではありません。
自分の性格や長所に合っているか知るために行うものです。
世の中には何千、何万という企業があり、それぞれの専門や強みも千差万別でしょう。
その中でも「給料がいいから」とか「有名な大企業だから」という理由で選ぶと、「人からどう見られるか」という世間体に意識が向いてしまいます。
そんな状態では自身の本音に蓋をしたまま面接を受けることにもなりかねません。
なんとなくのイメージで入社してしまってから仕事内容が合わないことに気づくと、自分も企業もお互いに損をしてしまいます。
そうならないためにも、「本当に自分に合う業界・仕事なのか」を常に考えながらこの記事を読み進めることで理解を深めていきましょう。
ちなみに業界研究を始めたばかりの人や、やり方がよく分からないという人はこちらの記事も併せて読んでみてください。
エネルギー業界とは
私たちが普段使っているエネルギーは「石油」「電気」「ガス」の3つに大分されます。
エネルギー業界の基礎知識・概要・売上高ランキングの項目に分けてそれぞれ解説しているので見ていきましょう。
エネルギー業界の基礎知識
エネルギー業界を指すときはこの石油・電気・ガスの3つを取り扱う会社ということを覚えておきましょう。
石油精製会社は採掘から精製、販売を行います。
電気会社は石油やガスなどの天然資源、太陽光や風力などのクリーンエネルギーを使って発送電を事業としているのです。
ガス会社も石油同様、採掘からタンカーによる輸送を経て各小売り会社から消費者へ流通していきます。
石油や天然資源はそのままでは使うことができないので大規模なプラントで使える形に加工したうえで輸送されるのです。
このようにエネルギー業界といっても業種は一つではありません。
採掘、加工をおこなうプラント、ガスや電気を安定供給する企業など業界の中に複数の役割を持つ様々な企業が存在しているでしょう。
エネルギー業界の概要
現代社会のエネルギーは石油・電気・ガスで生み出されているので、それらを総称してエネルギー業界と呼ばれています。
各分野の主な内容は以下の通りです。
石油
エネルギー業界の中では電気とともに取引額の大きい分野です。
昨今ではクリーンエネルギーなどの台頭や世界的な脱化石燃料の流れが見受けられます。
しかし、現代の社会はまだまだ石油に頼らざるを得ない現状があるので市場規模は非常に大きいものとなるでしょう。
電気
石油並みに市場が大きいのが電気分野です。
今の世界は電気でほとんどのものがまかなわれていると言っても過言ではありません。
今この記事を読んでいるデバイスも電気で動いていますね。
現在の電力は85%が化石燃料を初めとした天然資源から発電されているので、石油やガスの分野と非常に密接な状態にあるといえます。
ガス
上記2つに比べるとやや市場は小さいもののガスも人々の生活には欠かせないエネルギーの一つでしょう。
ガスはガス会社が管轄地域にガスを供給する「都市ガス」とガス管の通っていない地域にガスボンベを設置してガスを供給する「LPガス」の2系統に分かれています。
都市ガスの売上の半数強は工業用です。
個人宅では都市ガスのほかにLPガスも普及しています。
ガスは基本的にものを暖めることに使われるので、暖冬では売上が減少するなどと個人消費は上下しやすいのが特徴です。
エネルギー業界の売上高ランキング
エネルギー業界の売上高ランキングを先ほど解説した3つの分野に分けて紹介していきます。
石油
石油業界の売上高ランキングは上図の通りです。
上位は皆さんも聞いたことのある会社が名前を連ねているでしょう。
3位までの会社は石油元売り会社となり、4位が石油開発会社、5位が燃料商社となっています。
電力
電力業界の売上はそれぞれの地域の人口や経済規模と比例します。
人口や経済の規模が日本で一番大きいのは東京です。
したがって首都圏を管轄する東京電力が最も大きい事業者であり、それに次ぐのが関西電力となります。
かつては電力会社は法律で各エリアに作っていい会社の数が決まっていました。
電力会社同士が市場競争を加速させると収益が低下し、電力の本質である安定供給に問題が生じることを懸念されていたことが理由です。
しかし、現在では電力の販売は自由化され、小売りのみならず発電事業者も届け出さえすれば事業を行えるようになりました。
ガス
ガスの売上も電力同様、人口や経済規模で売上が決まる業界です。
電力と同じように人々の生活への影響が大きいため国が新規参入に規制をかけていましたが、こちらも現在では自由化されています。
より安いガス会社を選べるということは資本主義に則り市場原理が働くということなので、今後ますます競争は加速していくでしょう。
エネルギー業界の現状と今後の動向
エネルギー業界の現状と今後の動向を解説していきます。
現状
各分野の現状を解説します。
石油分野の国内需要減少
石油分野では国内の需要が2000年代から減少しています。
需要減少の主な要因は
- 世界的な脱炭素化
- エコカーの普及
- 少子高齢化による人口減少
地球温暖化が問題となってから久しくなりますが、今後は風力・太陽光などの再生可能エネルギーへの転換が求められます。
またEU諸国では2035年にはガソリンを使う新車の販売が禁止される予定です。
日本ではヨーロッパのメーカーの車が多数販売されているので、この影響は日本も必ず受けます。
そして石油に限りませんが、少子高齢化による人口減少はあらゆる消費に影響を及ぼすでしょう。
日本における石油需要は今後も減ることはあっても増える可能性は少ないといえます。
代替えエネルギーへの転換が必要
日本における電力消費量は大きな変動は少なく、ほぼ横ばいか若干下がっている傾向があります。
電力発電の85%が化石燃料や天然資源であることを考えると、今後の脱炭素の動きによってどのような代替えエネルギーで発電するかが鍵となるでしょう。
また電力会社の悩みの種である原子力発電所は東日本大震災以降、その安全性について議論が長らく続いています。
原子力発電所を稼働させるかどうかは国家レベルの問題ともいえる規模のものなので、今後も重要な課題となるでしょう。
人口減少の影響
ガス市場は原子力発電所の停止に伴い、火力発電が増えたため業績は好調な傾向にあります。
一方で家庭用の需要は増減があり、省エネ機材の普及や暖冬の影響を受けやすい市場です。
またガスも石油や電力と同様に人口減少の影響を大きく受けるので、新たな戦略を模索する必要があるといえるでしょう。
今後の動向
各分野の現状を踏まえ、今後の動向を紹介していきます。
再生可能エネルギー事業への参入
今後は電力や太陽光・風力などの再生可能エネルギー事業への参入がさらに拡大するでしょう。
需要が減ることが間違いない石油産業から総合エネルギー産業への転換を図り、地熱発電・バイオマス発電などの新エネルギー事業を展開しています。
またENEOSホールディングスはエネルギーの分野での今後の発展を見据えて、台湾での洋上風力発電プロジェクトを進めているのです。
また日本における需要は減少傾向ですが、東南アジア地域は経済発展の真っ只中にあるため石油需要は増加傾向にあります。
石油の需要があるということはエネルギーの需要があるということです。
この流れに乗って海外進出を図れるかどうかが今後の企業の発展を左右していく要素となります。
新サービス開発による市場拡大
電気とガスは小売りの完全自由化がますます加速し、様々な異業種が参入し競争が激化しています。
資本力がある企業は電力とガスのセット販売や割引などで既存の企業と差別化を図り、新しいサービスが開発されているのです。
電力は化石燃料からクリーンエネルギーベースでの発電が中心となっていくでしょう。
ガスは家庭用のエネファームを初めとした電力の代わりとなるエネルギーを提供することで市場の拡大を目指しています。
エネルギー業界の仕事内容
エネルギー業界が3つの分野で様々な会社があるということをお伝えしてきました。
それでは3つの分野でどのような事業が存在しどんなことを担っているのでしょうか。
エネルギー業界の仕事内容について紹介していきます。
石油開発会社
石油開発会社は原油の採掘を主な事業としているのです。
油田を調査したりプラント会社と共同して加工施設の建設をしたりしています。
石油元売り会社
石油元売り会社は石油の輸入、精製・販売を主な業務となるのです。
ENEOSホールディングスや出光興産など身近な企業がこれらの事業を行っているでしょう。
輸入して精製した後は各会社の系列ガソリンスタンドや後述する燃料商社に販売していきます。
燃料商社
石油元売り会社が販売しきれない石油製品を買い取り、「無印スタンド」と呼ばれる石油元売り会社の系列に属さないガソリンスタンドへ販売するのが燃料商社です。
石油は必要分だけを計算して精製するということが難しく、災害時や緊急時の安定供給の観点から余剰に作られています。
その余剰に作られて系列ガソリンスタンドが買い切れないものを燃料商社が買い取り、販売するという仕組みになっているのです。
発電事業者
天然資源や太陽光などを利用して電気を発電する設備を持つ事業者です。
発電所を作るには数千億円という莫大な投資が必要となるため事業参入できる会社は限られます。
送配電事業者
送配電事業者は電気を届けるための配電設備を構築、維持を事業としています。
国民の生活を守るために欠かせないインフラ設備であることから事業を行うには国の許可が必要です。
元々発電と送電は同じ事業者が行っていたため現在でも実質は発電会社から分離した関連企業が担当しています。
電気小売り
電気を消費者に届ける役割を果たすのが小売り事業者です。
元々東京電力や関西電力等の電気事業者ばかりでしたが、自由化に伴い最近はガス会社や通信会社も電力の販売を行い始めています。
ガスの輸入
ガスは日本でも新潟県などで産出されますが、全体の量からすればごくわずかなので、輸入に頼らざるを得ません。
海外からガスを買い付ける業務は商社やその他のエネルギー専門商社が行っています。
ガス卸売り
ガスは輸入の段階で冷却され液体にして運ばれます。
運ばれたガスを貯蔵しておくための施設を持っているのが東京ガスや大阪ガスなどの規模の大きい会社です。
貯蔵されたガスは自社のガス管を通して都市ガスとして供給されます。
LPガスは製造方法やガスの種類に違いはありますが、輸入・貯蔵・販売という流れは共通です。
ガス小売り
小売りは卸売り会社がそのまま一般家庭や工場に販売するケースもありますが、都市ガスもLPガスも自由化が進み多くの企業が参戦してくるようになりました。
小売り事業を始めるには国の認可が必要ですが販売価格に関しては制限がないので、電気同様に競争が進んでいくことが予想されます。
エネルギー業界に向いている学生
人の生活になくてはならないエネルギー業界ですが、どんな学生が向いているか解説していきます。
勉強熱心
向いている学生の特徴として勉強熱心が挙げられるでしょう。
エネルギー業界は最新のニュースや技術を常に勉強する必要があります。
環境に配慮した新しいエネルギーの開発には新技術が必要不可欠です。
また社会情勢の影響を受けやすい業界なので、世界で何が起きているか常に自分から情報を集めて勉強を進められる人が向いています。
グローバルな視点で見られる
日本だけではなく海外を見据えた考え方ができる人は向いているといえるでしょう。
日本のエネルギー自給率は極めて低いため、ほとんどのエネルギーの原料を輸入に頼らざるを得ません。
海外との取引の機会も多く、海外へ出張あるいは赴任するということもよくあります。
また現状の部分でも説明した通り、日本国内での需要は減少傾向にあります。
海外の情報を自分で解釈し新たな価値を提供できるようになるには、常日頃から海外のニュースに目を通すことが必要です。
CNNやBCCなどの英語圏のニュースを理解できる英語力があれば一層有利になります。
協調性が高い
エネルギー業界は事業の規模が大きく、一人で進めていく仕事というものは多くはありません。
様々な部署や外部の企業、果ては海外の人とも連携しながらWin-Winの関係を気づいていく必要があります。
独りよがりの言動をすることなく、周囲の人間とスムーズに協力関係を築くことができる人は仕事を進めやすいといえるでしょう。
まとめ
以上エネルギー業界について紹介してきました。
ひとくくりにエネルギーといってもその中には3つの分野があり、それぞれの会社の役割も多種にわたるということが理解いただけたと思います。
エネルギーは存在自体が当たり前すぎて、喝采を浴びたり感謝の言葉を受けたりということは少ない業界です。
しかしその当たり前を支えており、人類の存続に大きく関わる仕事であるといえます。
また理系、文系どちらの専門でも応募できる多くの職種があるのでチャレンジの幅も広がるでしょう。
さらに海外で働くことに興味がある方は英語も併せて勉強しておくとより有利となります。
この記事で学んだことを踏まえて自身の性格や興味に合っているか各社のHPを参考にしてみましょう。
最後に、本サイトでは天然資源の精製に関わるプラントエンジニアリング業界をはじめエネルギー業界に関連する記事も多く掲載しています。
興味がある方は以下記事も併せて確認してみてください。
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